それでも

「大丈夫沢田ちゃん!
次は絶対沢田ちゃんも気に入る子一杯連れてくるからさ!」
「あ、有難うロンシャン。
でも俺明後日は会合があるから」
「え〜〜、じゃあ明々後日は?」
「半年先まではぎっしりなんだ、予定。ごめんね」
「ちぇー。
じゃあさ!もし空いたら教えてね!」
「・・・うん。
でも実はねロンシャン、俺そんなに合コンとか興味ないんだ」

苦笑して言うツナにロンシャンは団栗眼を丸くした。






























【 それでも 】






























「えーーー!!そうだったの!?」
「うん・・・」
今までも遠まわしにだが、結構訴えてたつもりだったツナは困ったように笑った。
やはり伝わっていなかったらしい。

「そっかーじゃあどうしようかなー」
途端おろおろし始めたので、ツナは人が足りないなら誰か紹介しようかと聞くがそうじゃないんだよーとロンシャンは尻尾が垂れた犬のような顔をする。

「来てくれるの、沢田ちゃんじゃなきゃ意味ないし」
「?」
「だって俺、沢田ちゃんに会えるから合コン開いてただけだもん〜」

うーん困ったと唸りながらさらっと言われた言葉に一瞬呆気に取られたツナは、次に噴き出した。

「あのねロンシャン。
それなら合コンよりもっと良い方法あるんだけど?」
「え!何々教えて沢田ちゃん!」
途端キラキラと眼を輝かせるロンシャンに、ツナは笑った。
昔から変わらないこの無邪気な笑顔は周りを呆れさせるが、仕方が無いなと和ませてくれるものでもある。
マフィアのボスという立場になっても、未だに変わらない友が在ることは幸せなことだと思う。

「ただ一緒に御飯食べに行こうとか、遊ぼうって言ってくれればいいんだよ」

ツナが言ったことに暫しきょとんとしたロンシャンは、みるみる顔を明るくした。

「そっか、そうだよね!流石、沢田ちゃん!」
自分が言えた義理じゃないが、とてもマフィアのボスには見えない友に苦笑していると、ぴょこぴょこと辺りを跳ねていたロンシャンがピタリと止まり、手招きをする。
「ん?何ロンシャン?」
「えっとね、いっつも有難う沢田ちゃん。
俺沢田ちゃん大好きだよっ」

耳元でこそりと内緒話をするように囁かれた言葉に、ツナは赤くなる。
こうもストレートに言われると、友人同士でも照れるものがある。

しかし照れくさいながらも、ツナは嬉しくて笑った。

「知ってるよ、俺もロンシャンが好きだから」













じゃあ、御飯でも食べに行こうかと部屋から出て行くツナの背中を見つめながら、ロンシャンは寂しそうに笑った。
それはいつもツナに見せるものとは違う、大人びた表情。

ロンシャンが普段見せている顔。
それが相手を油断させる為の演技だということを知っているものは少ない。
昔はそれが素であったのだが、いつまでも子供でいて生きられる程この世界は優しくない。
良い意味で変わらないのは、彼だけだろう。

そう願うようになったのは初めて紫煙を嗅いだ時。

あの時から、ロンシャンは何も知らなくとも幸せに生きられる道を捨てた。
爆発しそうな心臓と、涙と鼻水でグシャグシャになった顔と頭の中で様々なものが駆け巡り、何度問い直しても、それでも後悔はしなかった。
自分の大切な子を奪われるのだけは、嫌だったから。













彼の言った“好き”と自分の言った“好き”は違う。
返答はいつも同じだとわかっているけど、時々言いたくてたまらなくなる時がある。




・・・それは決して伝わることはないけども。





(でも、それでも――)







「ロンシャン?置いてくよ〜?」
「あ!待ってよ沢田ちゃーん!」







今の気持ちを振り切るように、ロンシャンは部屋を飛び出した。





























(それでも俺は、君を想うよ)















<fine>
































だいぶ前にMEMOでのっけた小話に少しだけ加筆してみました。

アダノが書くと、切ない気味になるロンツナ。
でも好きなんだ!(笑)



2009.2.3


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