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「ラル!?なんでお前いるんだ!」
家庭教師を頼んだ筈の少女の姿に、家光はぎょっとして声を上げた。


此処は出張と称してボルネオに生息する希少種の保護に来たのだが、危険なミッションの為優秀な者達しか集めていない。
この選り抜きのメンバーの中でも飛びぬけているラル・ミルチというまだ若い隊長にも参加して欲しかったのは本当だが、ラルにはその前にツナの家庭教師を頼んだ筈だった。


まさか今ツッ君は家に一人!?と頭を抱えた家光に、ラルは不快そうに腰に手をやる。
「無礼な奴だな、俺は一度請けた仕事はちゃんとこなす。
お前の息子の家庭教師には代理をやった」
今回のメンバーでは些か不安だったからというラルに、正直なところ同じ気持ちだった家光は気を使わせてしまったらしいことに頭を掻く。
「そうだったのか。スマンな」
「別にお前の為ではない」
強すぎる日差しを遮る為のマントを翻してから一応といったように説明する。
「因みに代理はコロネロを行かせたからな。
お前も知ってるだろうが、まあ出来る奴だからお前の息子もなんとかなるだろう」
「そうかそうかコロネロかって、ええええええ!?」



コロネロ。
ラル・ミルチの従兄弟であり生徒。
優秀な軍の幹部。

そしてついでに金髪碧眼な美形の青年だった。









何もよくないよ俺が一体何のためにお前に頼んだと思ったんだあああ!?という情けない親馬鹿の絶叫は、煩いという女性教官の鉄拳でもって直ぐに止まった。




































【 鈍感師弟の恋愛方程式 2 】


































「此処へ行き、其処にいる餓鬼を鍛えなおして来い」
「・・・・・・・・・・・何の話だコラ」

部屋で休憩ついでにダンベルを上げ下げしていたコロネロは、ドアを蹴飛ばし入ってきた従姉妹に尋ねた。
いつも無理難題を押し付けてくる奴だが、今回のものは特によくわからないものだった。
しかも依頼元はあの家光だという。
息子がいたとは知らなかったが、何故態々このラル・ミルチに頼んで来たのだろうか。
確かに指揮官としてはコイツの右に出るものなんて片手の指程もいないのは確かだが・・・。
(見込みがねぇ奴は一刀両断して平気な顔して棄ててくる奴だぞコラ)

嘗て自分も鍛えられた経験をもつコロネロは、何て無謀なことをしたんだろうと聡いと噂の男の脳内の仕組みを疑った。
一緒にチームとして動いてたならわかるだろうに。


「だが俺はボルネオの探索に向かう。よってお前が替わりに行け」
嫌とは言わせない圧に、コロネロが逆らえる訳がなかった。
嘆息しながら床が抜けないようにそっと腕を酷使していたものを置こうと屈みながら尋ねる。
「で、何時の話だ」
「今日の14時、住所は自分で見ろ」
「ああ・・・・ッって、おい」
あと数センチというところで手を離してしまい、120kgというパンチを喰らった床が陥没する。
紙を受け取ったのを受理と認め背を向けたラルに叫ぶ。
「他県じゃねーかコラ!?」
「見ればわかるだろう」
「てめ、あと30分で着くわけねーだろが!!」
「そんなもの俺の知ったことではない。だが、」
「・・・・ッ!」




『ミッションに遅れと失敗は許されん。例え誰かが許したとしても俺は許さん』




嘗ての教えが体の彼方此方に数多の拳とともに刻まれていたコロネロは、鬼教官からの目線ならぬ死線から逃れるため窓から飛び降り、着の身着のまま走り始めたのだった。

















「・・・・・・・・・・・・・・此処かコラ」

そして着いたのは平凡な一軒家。
日本らしい似たような造りの家の前で足を止めたコロネロは、着の身着のままだったがこれだけは持ってきていた紙を見下ろした。
ラルが渡してきた地図、それと指令内容。
そこにはただ一行。



『この家にいる餓鬼を鍛えろ』



アバウトにもほどがあるだろう内容だが、まぁあのラルらしいといえばそれまでだった。
それに、
「アイツが俺にやらせようとすることなんざ、決まってるか」





最低自分の命を護れる程度に仕上げればいいかと、鍛える内容を勘違いした男がドアをノックしようとしていることなど、ツナは知るよしもなかった。








































コロ誕にと思いましたが終るわけもなく中途半端てかツナと会話もしてないしね・・・_| ̄|○

Continua a prossima volta... 2009.7.6



あきゅろす。
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