6月9日
「骸、遅いですね」
ツナは困ったよう時計に眼をやった。
「仕方ないね。
料理が冷めてしまうから、先に食べよう綱吉」
「…でも、」
「綱吉が優しいのはわかっているけどね、店のものも困るだろう?」
「う……、はい。
じゃあ、あの。いただきます」
「うん、いただきます」
少しばかり気にしていたことを指摘され、おずおずと手を合わせたツナに、雲雀は微笑んだ。
内心はほくそ笑みながら。
【 6月9日 】
洗濯物を畳む手を止めたツナは目を瞬いた。
「料亭?」
「うん。今度の火曜はアレの生まれた日だろう」
「そう、ですけど、」
一応多分きっと兄である自分は当然知っている。
ややフリーズしているツナに、雲雀は意外そうにする。
「何、もう予定でもあったの」
「いえそういうわけじゃ」
ただ、この兄が骸の誕生日を覚えていただけではなく、まさか祝おうなんて思っていてしかも料亭の予約までしようとしてくれてるなんて…ッ!
信じられないことだったが、兄弟仲良くしてくれることは喜ばしいことだったので。
「じゃあいいよね」
「はい!」
笑顔でツナは頷いた。
早速骸に伝えてきますねと行こうとしたツナの手を雲雀が取る。
「アレには当日まで言っては駄目だよ」
「?」
「秘密にしておいた方が驚くだろう?」
「ああ成程、そうですね」
唇に人差し指を添えて悪戯っぽくした雲雀に、ツナも嬉しそうに笑った。
雲雀が予約を二名しかしていないことなど知らずに。
例年通りに家でささやかな誕生日パーティを行うのだと言われていた骸はウキウキと家路に着いた。
料理の準備で先に帰っているとメールがあったので、一人で帰っていても幸せな気分だ。
ツナが自分の為に何かをしてくている。
それだけでこんなにも心が温かくなる。
年に一回この日ばかりはツナも自分の我侭を苦笑して大目に見てくれたり、あの男よりも自分を優先してくれる。
(僕はこの世で今最も幸せな者に違いありませんねッ)
今の気分のまま骸は楽しげに玄関の扉を開いた。
「綱吉兄さん!只今帰りました!」
しかし、期待していた出迎えも、料理の香りもしない。
「……?」
電気も付いていない部屋の明かりを付け、室内をキョロと見回すが、朝と同じようにきちんと片付けられたリビングがあるだけだった。
(おかしいですね…)
首を傾げた骸はそこで朝とは違ったものに気付き、テーブルに置いてあった便箋を何気なく手に取り、
そして固まった。
――愚弟へ
今日はわざわざ君の為に君が一生身を粉にしてもいけないような料亭を予約してあげたよ。
でも今日、君帰り遅いらしいから先に行くから。別に来なくてもいいし。
ああ、あと店は21時には閉まるから
雲雀
「あのッ、鳥男ーーーーーーーーーーッッッッ!!!!」
目的地の料亭まであと58km。
只今の時間―20:37
骸はこのあとツナへの愛で何とか時間内に辿りつきます(笑)
去年のムックバースデーにMEMOで書いたのです(殴)
2009.6.9
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