タイフーン注意報!
「へ?い、従兄弟?」
「・・・・そうだよ」
大変不機嫌そうではあるが雲雀が頷いた。
今二人の眼の先には、柔らかに微笑む1人の麗人。
「初めまして、でいいでしょうか?綱吉。
私の名前はフォン。風と書いてフォンと読みます」
宜しくお願いしますねという目の前の人に見つめられ知らず頬が赤くなるのに気付いていないツナは思った。
(いや、従兄弟っていうか・・・)
双子じゃないの、この二人。
【 タイフーン注意報! 】
沢田綱吉ことツナは、現在雲雀恭弥という青年の家にご厄介になっていた。
とあることで少しばかり路頭に迷って空腹で死に掛けているところを「何この小動物」と気紛れに拾って貰っただけなのだが、まあ今はそんなことはいいだろう。
「・・・ちょっと、何見惚れてるの綱吉」
「見惚れって、そ、そんな訳ないじゃないですか!」
傍から見ればポヤンとしてるとしか言い様がなかったツナは、雲雀がむっとしたように言ったのに説得力が無いように否定する。
「同じ顔なのにどうして僕には見惚れないの」
「いやいやいや何言ってんですか雲雀さん」
ポイントはそこですかっていうか似てるって自覚はあったんだ?
てっきりこの気に喰わなそうな表情から全然似てないよとでも言うのかと思っていた。
だがいつも無表情に近く、笑ったとしても咬み殺しがいのありそうな相手を見つけた時(つまり碌な時じゃない)位の雲雀に見惚れろという方が無理があるだろう。
いくら美形でも歩く凶器にボケッと見惚れていたら命がいくらあっても足りない。
ツナはぶっちゃけ面食いなので雲雀の顔は好きだ。
でも痛いのは嫌なので色々と諦めていた。
だがこの人なら・・・。
フラリとツナが餌に釣られるようにして風に近づく。
「どうしました綱吉?」
「あの風さん。突然ですけど良かったら、えと、」
「はい、何でしょう?」
優しげに尋ねてくれる人があまりに綺麗なのでツナはちょっと言いよどむ。
雲雀と同じ顔なのにこの違いは何なんだろうか。
やっぱり中身は大切だなと大変失礼なことを考えながら、思い切って口を開いた。
「俺の、カットモデルになってくれませんか?」
「カットモデル、ですか?」
不思議そうな顔をした風にツナが頷き、雲雀が眉を吊り上げる。
「ちょっと、風をモデルにする位なら僕にしなよ!」
「いや何言ってんですか、雲雀さん髪短いんだからそれ以上切ったら坊主になりますよ」
「別にいい」
「いや俺が嫌ですから!!」
無頓着過ぎるだろう!?と美容師の端くれでもあるツナには耐えられないことを平然と言ってのける雲雀に突っ込む。
てか坊主になったらカットモデルなど当分できないだろう。
「元々雲雀さんの髪質は上質で一回も染めていないみたいでしたから、凄く触りたいなとは思ってたんですけど」
美形だしと付け足した後、ツナは恍惚として風を・・・、正確には風の髪を見る。
「風さんの髪の長さなら、触り放題のアレンジもし放題じゃないですか・・・!!」
それを想像しているのか、ハートを乱舞させていることに大変気不快そうに雲雀が唸る。
拾った理由を聞いた時から思っていたことだったが・・・、
『君、何でこんなになるまで彷徨ってたの』
『カットモデル探してたんですよー』
『・・・・それで行き倒れるって変じゃない』
『いやあ理想の髪を捜してたら御飯食べるの忘れてて、あはは』
『・・・・・・・』
「この髪フェチ・・・ッ!!」
「有難うございます雲雀さん!ホント髪って最高ですよね!!」
「意思の疎通がとれてないんだけど聞いてないでしょ綱吉!?」
聞いているようで全然聞いていない無駄に良い笑顔のツナに雲雀は青筋を浮かべる。
そんな突っ込みなど珍しいことをしている従兄弟を、風は珍しそうに眺めた。
(雲雀がこんなに人を好くなんて珍しいですねぇ)
そんな雲雀にとって大切な相手ならば自分も大切にしなければならないだろう。
「私でよければやらせていただきますよ綱吉」
「「!!」」
ホントですか有難うございます風さん!!と喜ぶツナとは対象に雲雀が瞳に炎を灯し、風は雲雀も嬉しそうで良かったなどと頓珍漢なことを考えた。
「・・・・は?」
「いいから即効性のあるのなら何でもいいから買ってきて!!」
その日、呼び出された草壁が育毛剤を買って来いという指示に首を傾げたことなどツナはもちろん風も知らない。
<fine>
誕生日のアリに捧げるフォンツナヒバ=風雲サンドとか言ってみる(超いらねー)
朝書いたブツなのであれな感じですが兎に角アリ誕生日おめでとうなのでした!!
2009.5.31
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