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「うん、やっぱり綱吉君の淹れたお茶は美味しいね」
「有難うございます」

ほかほかとした昼下がり。
その豪邸の庭園には1人の老紳士と、傍に控えた執事がいた。


手馴れたようにお代わりを注いでくれる青年に、ふと思い出したように老紳士は告げた。
「そうだ、以前話した少年へのお礼なんだがね」
「はい」
「少し身の回りが危ないようだから、守ってあげてくれないかな」
「ではそのように手配を、」
「いや今回はね、君自身に出向いて欲しいんだが」
「・・・・私が、ですか?」

主人である老紳士の言葉に、普段ならば否を唱えることなどしない執事は少し顔を曇らせた。
あの少年を守ることには依存はないが、主人の傍を離れることが嫌だったのだ。

それを読み取ったのか、駄目かい?と苦笑する老紳士に、執事は暫しの沈黙の後首を振った。
少しばかり主人から離れることに不安が無いと言えば嘘になるが。



(これが貴方の命ならば)



「いえ、異存などございません」
「・・・有難う、綱吉君」



優雅に一礼した執事に、老紳士はほっとしたように微笑んだ。




































【 僕等はファミリー 】

































「う゛お゛おおおぃ!ベル!テメー危ないから近づくな!!」
「シシシ王子怪我なんてしないもん」
「王子関係ねー!!」

ズダダダと野菜を刻む音が響く台所から今日も声が飛ぶ。
長い髪を緩く三つ編みにして家事に勤しむその姿は正しく主婦の中の主婦といってもいい程の手際の良さだったが、手馴れたように包丁を操るのは年若い青年だった。

彼の名前はスクアーロ。
自分を合わせて16人という大家族を養う大黒柱のようになっている長男である。



悪戯盛りの弟を火から遠避けたスクアーロは、次に大きな物音のした背後を振り返りキツめだが端整な顔をギョッと引き攣らせた。
「ザンザス!おま、何だその格好!?」
「カスが」
「それじゃ答えになってねえだろうがぁ!!」

動かしていた手を止め、何故か血まみれスプラッタになっている弟に慌てて近づく。
「何処か怪我したのかぁ!?」
「んな訳ねーだろ。コレは相手の返り血だ」
「園児が恐えことサラっと言うなあああ!!」
「るせぇ」
「がふぁ!」
視線を同じにしていた弟に顔面に頭突きをされた。

(この理不尽の権化のチビめ・・・!!)
言いたくてもさっさと行ってしまった弟に痛めつけられた鼻を押さえて立ち上がる。
心配をしたというのに何だこの仕打ち。

嫌になりながら晩御飯の支度に戻ろうとして、控えめに叩かれたドアに気付いたスクアーロは舌打ちした。
「クソ、またあいつ等かぁ?」

この家では電気代が勿体ないということでチャイムなんてものは無い。
妹達はただいまと声をかけ自分で鍵を開けて帰ってくるし、兄弟達や知り合いは皆勝手に我が物顔で乗り込んでくる。
ので。ご丁寧にノックをするといえば借金取り以外はいなかった。
無視すると近所迷惑になった過去があるので渋々とドアを開け放つ。
「悪ぃが金はねえって何度言ったらわか」
「お金、ですか?」

しかしそこにあったのは不思議そうに首を傾げた少年だった。
兄弟達の友達かと慌てる。こんな不愉快な出迎えもないだろう。
「悪ぃちょっと勘違いした。お前は、」
「はい、初めましてスクアーロ様。
私は今日から働かせていただくことになりましたハウスキーパーの沢田綱吉といいます」
「・・・・・あ?」
「俺の主人であるティオッテモ様から、貴方様に仕えるようにと言われまして」
「ちょ、ちょっと待て!俺はそんな奴知らねーぞぉ!?」

人違い、または家違いではないかというスクアーロにツナは首を振る。

「確かに貴方様はご存知ないかもしれませんが、主人は以前に命を助けていただいたスクアーロ様を恩人だと言っておりました」
「命を助けた恩人!?」

全く話が見えない上に身に覚えもない。
混乱しているスクアーロには気付いていないのか、綱吉と名乗った青年は人好きのする顔でにっこりと微笑んだ。

「ふつつかものですが、どうぞ宜しくお願いしますご主人様」
「ごしゅッ・・・ッ!?」




言われなれない言葉にスクアーロは真っ赤になった。

















2009.5.16 Continua a prossima volta...


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