隣人ホスト


幼い頃、大好きな子に約束したことがある。
それは一番格好良くなって、必ず帰ってくること・・・。


































「え〜、だってちゃんと此処だって教えて貰ったんだから私ぃ」
「・・・・・・ですからそれは此処じゃなくて隣の住人だって言ってるじゃないですか」
「え〜?でもぉ、チャイム鳴らしても誰もいなかったしぃ」
「そんなこと言われても俺ただの隣人ってだけですし、とにかく此処は俺の家なんで。
すいませんけど」

間延びした話し方といつまで経っても進まない話にうんざりしたツナは、其処で見切りをつけてまだ未成年であろう少女を無理矢理帰した。




「はぁ〜・・・・」
ぶつぶつと言う声を遮るように閉じたドアに背を持たせ嘆息する。

次にそれを皮切りのように沸々と沸いてきた怒りを、少女の足音が消えるまで待った後。
ツナは勢いをつけて部屋を飛び出し、隣室のドアを殴りつけて怒鳴った。



「いつまでも居留守使ってるなよこのヘボホストォーッ!!」


































【 隣人ホスト 】


































「な・ん・ど・め・だと思ってんだよ!いい加減にしろ!!」
数えるのも阿呆らしくなる位の隣人目当ての女性の訪れに、ツナは今日も隣室のドアを壊さんばかりの勢いで叩いていた。

やがて1分は続いていただろう暴音にやっとドアは開かれ、眠たげで不機嫌を隠そうともしない男が顔を覗かせる。
一般的な男がそんなことをして心証が良くなることはまずないだろう。

しかし腹の立つことに身体を気だるげにドアにもたれさせたこの男――リボーンは違った。

こんなダレた状態でも流し目一つで大抵の女性は墜とせるのだから手に負えない。
リボーンはそのまだ開ききっていない切れ長の眼で肩を怒らせやってきたツナを見下ろす。
「・・・・・うるせーゾ、今何時だと思ってんだ」
「健全な人間ならとっくに起床して活動してる時間だ馬鹿!」
今寝付いたとこだったのに酷ぇ奴だなという、何度繰り返し聞いたかわからない言葉を宣うリボーンにツナは眉を吊り上げる。
全く見目がこれじゃなければただのマダオだと常々思う。

「ホストでどれだけモテてるんだか知らないけど、俺を巻き込むのだけは止めろって言ってるだろ!」
いい加減にしろと言うツナに男は真顔で返す。
「なんだ、嫉妬か」
「ただの苦情だろどう考えてもナルシストも大概にしろよこの野郎」

ツナの声が1オクターブ程低下した。
いつまでもこの状態に絶えられる程俺は人間が出来ていないのだ。

「こっちはお前がお前の客に間違った部屋番号教える度に迷惑してるんだからな!」
全くこの男は何度間違えたら気が済むのか。今月に入って26回目は流石にもう業とやっているようにしか思えない。
ホスト界で『キング』と称されていようが、三桁の数字も覚えられないなんてただの馬鹿だ。

しかしそんな怒り心頭寸前のツナを気にもせず、欠伸を噛殺しながらリボーンは至極ダルそうにする。
「折角の休みまで女の相手なんかしてられるか。珠には平穏に一人で寝させろ」
「既に害されてる俺の平穏はどうなるんだよ大体お前のことなんて知らないし」
「俺はモテモテだからな…、仕方ねぇんだ」
「何が仕方ないんだよ何もよくねーよ」

フッと哀愁の漂った、しかし優越感の混じった眼に対しツナの眼は半眼になる。
学校の友人が見たら驚く程今のツナは殺伐としていた。

「モテる男は辛いんだってことがオメーにもわかったら、」
「わかんないしわかりたくもないし腐れホストの生態とか少しも知りたくないから現状で結構」

遠回しに喧嘩売ってんなら買うけど?とツナはすっかり据わった眼で睨みながらも真面目な顔になる。

「大体お前、あんな未成年みたいな女の子まで誑かすのは止めろって言ってるだろ?」
「あ?オメー、自分が迷惑かけられて怒ってたんじゃねーのか?」
「それも大いにあるけどってか大部分を占めてるけど。
でもあの位年からホストの男と付き合うとか、あの子の将来的に良くないし」
「・・・・・オメー、馬鹿みてーにお人好しだな。相変わらず」
「? 別に普通だろ?」
「・・・・・・・・・」




(全くコイツは・・・)
そうとは知られないように、リボーンは苦笑した。

迷惑をかけられただけの、言ってしまえば全く関係の少女を自分のことのように心配するこの隣人。




(どうしようもねぇ程のお人好しも甘さも。昔も今も変わってねーな、本当に)




「向こうから勝手に寄ってくるだけだから俺に過失はねえゾ。
恨むなら俺を此処まで麗しく造形した神でも恨むんだな」
「・・・・っお前なぁ!?」















でも自分だけ覚えているのは悔しいから、もう次は忘れられないようにしてやるからな。
































帰ってきた幼なじみがホスト界のトップとなって帰ってきたことを、ツナはまだ知らない。



<...fine?>
































幼馴染パラレルリボツナ。
うーんリボツナはやっぱさっさか書けるなー。
まあ別荘の既出ものに加筆しただけなのですが(苦笑

2009.5.11


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