噂の沢田綱吉
「すいません先輩、私好きな人がいるんです」
自信満々に頷いてくれるだろうと思っていた告白を断わられる程恥ずかしいものもない。
周りからも付き合っているのだろうと言われたり、本人も自分に満更でもない様子だったのに。
だから余計に予想だにしない言葉にがーんと衝撃がくる。
「えと、2-Aの沢田綱吉君です」
しかも負けた相手が学校中から駄目な奴だと認知されてる後輩だったら尚更だろう。
まあそうと知ったのは周りに告白の結果を聞かれた時なのだけども。
それは誰なのかと聞いたのに対し学校のマドンナが可愛らしく恥らって言ってくれたことに、俺はそうかとしか言えなかった。
【 噂の沢田綱吉 】
「で、僕に何の用?」
「いやお前知り合いらしいじゃん、沢田って奴の」
「綱吉に惚れたら咬み殺す!!」
「いや惚れねえよ!!」
何で振られた子が好きな相手に惚れなきゃいけないんだよどれだけ質悪いバツゲームだ!
バイオレンスだけれどもクールで感情を滅多に乱さないと思っていた同級生(でも俺が一年の時も三年だった)の意外な表情を見てしまった気分になった。
ならいいけどとチャっとトンファーを向けるのをやめたことにホッとする。
一年近くの付き合いで何とか竹刀で凌げる程にはなったとはいえ怖いものは怖い。雲雀と話す時には竹刀が必需品だ。
「それで?僕の綱吉に何か用なの」
「お前のなのかよ・・・」
「当たり前でしょ」
突っ込むのも面倒だったので気になるからだよと言うと問答無用で咬み殺された。
俺が何をした!?
何とか話が出来る位の距離で叫ぶ。
「お前が思ってるような意味じゃねえよ!!」
「じゃあなんなの」
「ただ、そんな魅力あるやつなのかと思ってだな、」
「それで厭らしい眼で綱吉を見てたわけだね!?」
「見てねえよっていうか会ったこともねえっつーの!!」
話が続かないので早口に説明する。
自分が告白した笹川京子が好きだという相手は噂では駄目駄目という。
それなのに何故あの才色兼備の学園のアイドルが好きだというのか。
・・・・・・・・って何で放課後とはいえ自分の玉砕話を大声で言わなくちゃいけないんだ、苛めかチクショー。
ますます落ち込んできたところで、ああと雲雀は納得したようにやっと手を下げてくれた。
「あの子達は昔から好き合っているからね」
「やっぱそうなのかよ・・・・・」
てっきり好かれていると思ってた自分がなんだか馬鹿みたいだ。
これがピエロってやつだろうか。
あーあ。
「じゃあ付き合って結構経つのか?」
「そんなわけないでしょ、付き合ってなんていないもの」
「は?だって相思相愛なんだろ?」
「でも無理なんだよ」
そう言って背を向けた雲雀の言ったことに、俺の頭の中は疑問符で一杯になった。
「だって二人とも僕の妹弟だもの」
「はぁっ!?」
どうやら俺は笹川京子の血の繋がった兄に負けたらしい。
しかも今の話じゃあの雲雀恭弥の弟でもあるのか?
って、皆苗字違うじゃねえかどうなってんだ!?
「沢田綱吉って、何者なんだ・・・・」
余計に沢田綱吉という奴が気になって仕方なくなった。
もういっそのこと2-Aに顔を見に行った方が早いかもしれない。
そんなことを考え座り込んでいると、
「あれ先輩何してるんですか?」
「・・・・・あぁ、ツナじゃねえか」
聞きなれた声がしたので顔を上げれば、時珠校内で会ったら話す程度の後輩がいた。
あだ名がツナということしか知らないけども、結構良い奴だってことは知ってる。
そんなとこ座ってたらか風邪引いちゃいますよと言ったのにそうだなと立ち上がり、ズボンに付いた埃を払う。
ツナのおっとりとした声を聞いていると気が落ち着いてくるから不思議だ。
何だか沢田綱吉のこともどうでも良くなってくる。
そもそも気になってるって方が変なんだよな、うん失恋したことと一緒に忘れよう。
雲雀の親族という時点でアウトだし、係わらない方が身の為だ。
1人自己完結して、転がっていた竹刀を差し出してくれた後輩に軽く礼を言うついでに聞いてみる。
「もう帰りか?」
「はい、先輩はこれから部活ですか?」
「一応顔出して帰ろうかとは思ってる」
「そうですか、頑張って下さいね」
「あぁ、お前も気をつけて帰れよ」
「はいじゃあ」
「おう」
何のことはない会話。
それでもそれにツナの笑顔が付いてくると心が和む。
ああいうのを癒し系っていうんだろうな。
「って、野郎に思うのも変か」
独り言を呟いて部室に向かった。
自分の顔が緩んでいることにはちっとも気付かずに。
剣道部主将持田剣介が、沢田綱吉と知らずにツナに好きだと口走ってしまう少し前のことだった。
<fine>
ヒバツナにモッチーダの誕生日ということで持田先輩を足したらこんなものになってしまいましたけどもトナカイ様に相互感謝として捧げます!!(これを!?)
遅くなってすいませんでしたナカスン(笑)大好きです!!
3009.3.13
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