サンタのお仕事

「うー寒い・・・」

キーコキーコと耳障りな音を立てる愛車にそろそろ替え時かなぁなんて思う。
長年使ってたから、愛着がある分ずるずる来てしまったけども、仕事に支障が出るのはいただけないし。

「あれ、でもこれ去年も言ってなかったけか俺」
ぼんやりと独り言を言っていると、目的地が見えたのでゆっくりとハンドルを握った。
あまり急に握るととんでもない音を出すので、ここら辺は心得ている。

「確か此処は、ハルん家だったかな」
ポケットから出したメモ帳を見て確かめ一人頷く。
毎年毎年会っているので名前も覚えた。
古びて繕いばかりの袋から今までの子よりもややデカめなものを引き摺り出す。
改めて見たものに苦笑が浮ぶ。
「んー・・・やっぱ靴下入らないよなコレ、如何考えても」
何でこんなものを欲しがるんだろう。
去年は確かはまはげの着ぐるみだったし・・・。
不思議だがとても良い子なのは知っているけども。
5歳の少女が望んだものとは思えない、屋台舟の模型をよいしょと背負う。

息を止めて壁を通り抜け、二階にある少女のベットまでゆっくりと上がる。

静かに寝息を立てている少女の傍にそっと模型を置き、一息吐く。
あどけない寝顔に自然に笑みが零れる。
ああやっぱり子供の寝顔はいいなぁ。
ちょっとだけ幸せを味わってから元来た道を戻った。






























【 サンタのお仕事 】































「えーと次は、フウ太?」
聞いたことの無い名だ。
最近引っ越して来たのだろうか。
初めての場所だがまあ超直感があるからなんとかなるだろうと思ってペダルを大きく踏み込む。
もう殆ど配り終えたので、荷物少ない分ペダルは軽かった。

一台の車も通らない車道の横を古びた自転車が走る。
上を見れば綺麗な星空。
人が作ったイルミネーションも良いが、やはり自分はこの天然の明かりの方が好きだなと思う。
ご機嫌に調子外れの鼻歌を歌っていると、一台の車が走ってくる音が聞こえた。
聞きなれたエンジン音にツナはゲッと顔を顰める。
まさか・・・。

結構な速さなのに危なげなくツナの自転車に横付けしたフェッラーリには、一人の男が乗っていた。
夜中なのにかけたサングラスを外すと、暗闇でもわかる美貌。
しかし誰もが息を呑んで陶然となるであろう容姿を持った男に、ツナは心底嫌そうにうええと顔を顰めた。
それに構わず男はツナに甘く笑いかける。
「チャオ、ツナ。元気だったか?」
「リボーン、煙い、臭い」
「・・・・・・・お前、久しぶりに会った第一声がそれかよ」
つけたままのエンジンにより出される排気ガスが嫌だというツナに、男は仕方なくエンジンを止めた。
それからツナが乗っている自転車に眼を止め、何ともいえない顔をする。
「おめーまだそれ乗ってんのか。
いい加減買い換えたらどうだ」
「るさいこの成金サンタ」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねえよ。
俺は元々金は腐るほどもってんだっつの。」
「あっそうよかったねどっちにしろ夢を与えるサンタがフェッラーリ乗りこなしてんなよな。
つーかお前仕事は?」
「とっくに終わったぞ」
「へーそりゃ凄い。
でも俺はまだ終わってないからさ、邪魔しないでくんない」

誇らしげに胸を張るのに半眼になって言うツナに、リボーンはニッと笑う。

「手伝ってやってもいいぞ」
「冗談。何の恩を着せられるかわかんないし、何でこんないい事お前に譲んないといけないんだよ」
「ちっ」
「図星かよ」
呆れて嘆息する。
こんなのが何でサンタなんてやってるんだ。
「でもオメーぐらいだぞ、サンタの仕事を楽しんでやってんのは」
「そう?」
「お前もわかってんだろ。
俺たちが必要なくなってきてるってのは」
「・・・・・・・・」
何も答えずツナは無言でキーコキーコとペダルを踏み始める。
暗くてその表情は読み取れない。
リボーンは自分の車をそのままに、ツナの後を追った。

「リボーン、俺さー」

リボーンが眼だけで少年の方を見れば、少年の顔は酷く白く見えた。
吐く息も同じに白い。

「ちびっ子達の寝顔が好きなんだよね」
「ま、大抵この仕事やってる奴はそうだろな」
「お前もそうだなんて俺始めて知ったよ」
「てめえ・・・」
「嘘、ちゃんと知ってる」

ちょっと笑ったことが分かって、リボーンは少し赤くなって黙る。

「だからさ、一人でもいいから。
俺たちを信じてくれてる子がいるならさ、いいかなって思うんだよね」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「待っててくれる人がいるって、幸せじゃん?なんか」

照れたように笑う。

月に静かに照らされるその横顔に、見惚れる自分は馬鹿だと思う。
その心に、毎年惚れ直しているのだから。






ああもうこれだから辞められないのだ。







「で、リボーン」
「なんだ」
「何でお前ついて来てんの」
ご自慢の車を置いてきてまで何をやっているのかという眼を向ければ、ニヒルな笑みが返される。

「そのおんぼろ車とお前だけじゃあどっかの餓鬼が貰い損ねてベソかきそうだからな。
手伝ってやる」
「だからいーって言ってるだろ!」
「夜明けまで後3時間だぞ?
本当に終わるのか?」
「・・・・・・・・・・・」

自分の仕事の遅さには自覚があるツナは嫌そうに毎年毎年同じことを言ってくる腐れ縁に、取り合えず憎まれ口を叩いた。

「ご自慢の車がレッカー車に浚われても知らないかんな」
「ああ別にまた買えばいいからな」
「・・・・・・・・うん俺改めてお前嫌いだわ」
「素直じゃねーなぁ」
「お前嫌悪って言葉知らないの?」











それだけが理由で続けているわけじゃないけれども。
当分辞められそうにない。







この青年がいる限り、きっと子供達は信じ続けると思えるから。
















<fine>





























なんじゃこりゃあなものでスミマセン(汗
ホントは世界各国に散らばったサンタがさっさと仕事を終えてツナサンタのとこへやってくる予定だったんですが_| ̄|○
因みに皆高級車乗り回してるサンタばっかです(笑)
中には庶民的なのもいますが。
落ち着いたら書きたいなぁ。

何はともあれ今月いっぱいフリーです!

良かったらどうぞお持ち帰り下さいませv




2008.12.25


あきゅろす。
無料HPエムペ!