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「・・・・・・いい加減泣き止めぇ」
「うっうっ、スクア、ロの馬、・・・鹿っ」
予告もなく躊躇もなく飛び降りたことに不安定な肩の上で地面につくまで軽く走馬灯のようなものを見てしまったことを未だ怒っているツナに、スクアーロは少し悪いと思いながらもため息を吐いた。
資質を知っていても、やっぱり気のせいなんじゃと考えてしまう。
これでボンゴレを継ぐものだとされているのだから。
そろそろかと思って、本来の目的を口にする。
「お前、俺がどうして来たかは知ってるだろう」
「ザンザスには会わないよ」
「・・・・・・・・・」
鼻を啜ったツナは次の言葉を予期していたかのように先に言う。
「俺はアイツを傷つけた。
だから会う資格も意気地もない」
以前と同じ言葉なのに、込められた声音の意思の強さに、スクアーロは少しだけ眼を見張った。
今、自分の目の前にいるのは、いつからか全てを受容するだけで何も望まなくなっていた青年ではない。
「今はね」
「どういう意味だぁ?」
訝しげに尋ねたスクアーロに、ツナは嬉しそうに笑った。
とっておきの内緒話をするように耳打ちする。
「俺ね、ベルにお店開こうって誘われたんだ」
「・・・・・・・・・・・・意味わかんねーぞぉ」
「うん、だからね。
いつか店が開けて、誰に出しても美味しいって言って貰えるようなお茶が淹れられるようになったら・・・。
その時は飲みに来てって、伝えて」
勿論その時はスクアーロもだよと言ったツナに、スクアーロは嘆息した。
帰って報告した時の報復が恐ろしくもあったが、この言葉を伝えた時の上司の顔にも少しだけ興味があったから。
そして何より、
「俺は不味いもんは飲まねぇぞぉ」
「ははッ、わかってるって」
この屈託なく笑えるようになった青年が淹れてくれた、とっておきの紅茶を飲みたいと願っている自分がいるから。
「ただいま〜・・・」
鍵もかかっていないドアを開くと、直ぐにあったベットに不貞寝しているらしい青年の頭が見えた。
寝ているのかと思ってなるべく音を立てないように近づく。
「ベル?・・・寝てるの?」
暫く待っても反応がないことに諦めて背を向けると、ツナは突然後ろに引っ張られた。
「痛てて・・・」
気付けば仰向けにベットに押し倒されていたツナは、自分を見下ろしている青年を見上げた。
「まだ、怒ってるの?」
「・・・・・・・・・・・怒ってんのは、綱吉だろ」
拗ねたような声音に呆れる。
「あのなぁ、あんなこと誰が誰に言ったって俺は怒ってたよ?
それにその前に突然キレ始めたのはベルだろ」
「だって、アイツ綱吉に慣れ慣れしいんだもん。
あったま来た」
その言葉に、やっとツナはベルがスクアーロに妬いていたことに気付いた。
それは子供のような独占欲。
でもその分一途で純粋な綺麗な想い。
困ったと思いながらも少し何処かで嬉しいと思ってしまう。
「俺だけじゃ、駄目?綱吉は俺がいるだけじゃ足らない?
アイツみたいな、綱吉のこともっと知ってる奴と一緒のが、いい?」
心細そうな小さな声。
「・・・・・・・」
ツナは目元を手で覆う。
自分は随分困った相手の手を取ってしまったようだ。
でも、ああもう可愛いなと思ってしまった時点で負けかもしれない。
「ベル、俺はお前以外の手を取ろうとしたことはないし、お前程俺のことを想ってくれてる人には会ったことがないよ」
「?」
「だから、お前だけで俺には十分ってこと」
「・・・・・・・・・・ッ!!」
笑いかけると同時位に、ツナはお腹に衝撃がくるのを感じた。
何事かと思ってみれば青年が自分の腹にしがみ付いている。
「・・・・・・・・・ベル、お前何やってんの」
正直重いからどいて欲しいと言っても反応がない。
それによく見れば少し覗いて見えたベルの耳が真っ赤になっていた。
風邪でも引いたのだろうか。
「・・・・・・王子Sだと思ってたけど、ちょっと違うかもしんない」
「は?」
「綱吉にはMになるっぽい。
だって今日殴られた時、なんか嬉しかったもん。
あー俺愛されてるーみたいな?」
「・・・・・・・・・ベル、そういうアブノーマルな世界には俺興味な」
「だから綱吉には苛められたい。
もっと殴られたい」
「べ、ベル俺ちょっと用事思い出したか」
「沢山殴って、それで俺に触って欲しい。
ずっとずっと俺だけ構って。
綱吉以外に触られるのは嫌だし、綱吉が俺以外を触るのを見るのもヤダ」
「・・・・・・・・・・・・」
「ねえ俺だけを見て俺だけを愛して綱吉・・・」
「・・・・・・・・・・ベル?」
そっと呼んでも反応はない。
健やかな寝息が聞こえるだけだ。
じゃあ自分もベットに戻って寝ようとも思うが、生憎とぎゅうと抱きしめられた腕から抜け出せる術は知らなかった。
嘆息して、下に蹴飛ばされていた布団を引っ張りあげる。
枕は、まあなくても平気だろう。
明日うるさくて寝心地悪かったと言われるような気がしたが、寝心地を確認する前に人の腹にしがみ付いて寝始めた方が悪い。
サラサラとした綺麗な髪にキスを贈る。
それが子供を相手にしているようだとベルは嫌がるが、仕方ないじゃないかといつも思う。
こんなに自分を好いてくれる子を、愛しい以外の気持ちでどう表せというのだろう。
「おやすみ、ベル」
一つ囁き笑みを浮かべたツナに、それに応えるようにベルは笑った。
<...fine>
遅くなったけどベル誕生日おめでとう!!
2008.12.23
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