1

「はいはいはーい」
「今日、隣に越してきた者だが・・・」

緊張も無い義務のみとわかる青年の言葉は、何方様〜?と疑いもせずに出てきた相手を視界に入れたことにより途切れる。
無言になった訪問者に首を傾げた沢田綱吉ことツナは、そこでやっと沈黙している青年に違和感を覚えた。


(・・・・・あれ?)


何処かで、見たことがある顔だった。
否、見たことがあるどころではない気がする。

寧ろ、毎日一度は必ず会っているような。そんな懐かしささえ感じる容姿。



そう。
例えば町行く時のショーウィンドウで。

例えば教室から外を眺めている時に。

例えば、洗面所で顔を洗って上げた時に・・・。












「・・・・・・・ッって、え、えええええええええ!!?」











「・・・・・・・・・・うるさいぞお前」
「もががッ!?」

押さえ込まれる位の大声を思わず上げる程。





「お前は一体・・・、何だ?」




訝しげに、だが何処か困惑したように見下ろしてきた自分と全く同じ容姿の青年に。

ツナは自由にならない口をもががと動かした。
























【 偶然と必然の境目 】























「そ、粗茶ですがいいですか?
っていうか、お湯沸かしてる最中なんで、今は出せないんですけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・・お構いなく」

素っ気無く言われたきり会話が無くなった。
いやそもそも会話なんて成立してなかったのだが。


眼の前にいるのは沢田綱吉、・・・さん。


別に自己紹介してる訳じゃない。
今日隣に越してきた隣人さんのお名前だ。

同姓同名という吃驚ハプニングで終わってくれたらまだ良かったのに。
郵便屋さんが困りそうですよねーと笑って終わりにできる位な感じで。

ところがそれを許さない偶然・・・、と簡単に片付けていいかもわからないことがあった。




それは彼と俺の容姿まで一緒ということ。
まるで生き別れた双子の兄弟のように同一。




だが両親の名も出生もバラバラということで直ぐに実は兄弟でしたーというオチは消えた。
いやあったら即効実家に帰って親父を吊るし上げてやるところだけど。

「お前、生まれた日は何時だ」
「え、10月14日ですけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・其処まで同じか」





いややっぱまだ捨てきれないかもしれない。





「えっと沢田、さん」
「・・・・・・・綱吉でいい」
「じゃあ綱吉さん」
「さん付けもいらない。
自分の顔に他人行儀に呼ばれるのは妙な気分になるからやめてくれ」

実際は初対面だが、とぼそりと付けたしている眼の前の人も困惑していることに何故かほっとしながら言ってみる。

「つ、綱吉?」
「何だ」
「あ、呼んでみただけです」
「・・・・・・・・・・・・・・」


同じ顔に自分の名前で呼びかけるなんてなんとも奇妙な気分だった。
果たして慣れるかななどと考えていると、やかんが鳴ったので慌てて立ち上がる。

この急かすような音に自分はとても焦るので、まだ熱いとわかっているのに柄に触れてしまう。
「あちち!」
「・・・・・・・先に火を消せ」
「あ、どうも」

いつの間にか背後にいた青年に冷静に指摘して火を消してくれたことに礼を言う。

「・・・・・・・・・・二人暮らしなのか?」
「はい?」
「いや、あまり家事に慣れていないようだから」

やかんを持ってくれたことに礼を言いながら茶葉を出す。
沸かしている間に出しておけば良かったのだが、突然の吃驚なお客さんにそれも忘れていた。

「ええと、一応一人です」
「一応?」
「家賃が高いんで、ルームシェアしたいなとか思ってるんですけど中々人が見つからなくて」
「あぁ」

納得したようにしてから開かないことに悪戦苦闘していた茶筒を取られ、開けてくれる。
・・・・・・世話好きな人なのだろうか。

「あ、それ緑茶ですけど平気ですか?」
「どういう意味だ?」
「えっとさっき生まれた時からイタリアにいたって言ってたから・・・」
「祖父が日本好きだったから、向こうでも良く飲んでいた」

だから平気だということに納得する。
通りで手馴れている訳だ。

「それに両親は二人共日本人だ」
「そうなんですか?」
「・・・・・・・・・・お前、自分と同じ顔ならそれ位わかるだろう」
「あ、そっか」
「・・・・・・・・・・・」

沈黙されて恥ずかしくなった。
でも仕方ないじゃないかとちょっと言い訳してみる。

自分と同じ顔とはいえ、この人は表情が大人びていて動作の一つ一つが洗練されている。
無駄が無いのだ。


どちらかといえば愚鈍な自分。
ないものがある人と自分が同じだとは、少し思い難い。



淹れ立ての良い香りに眼を和ませていると、湯飲みを眼の前に置いてくれながら聞かれる。

「お前のことは何と呼べばいいんだ」
「沢田でも綱吉でも何でもいいですよ」
「・・・・・・・・同じ呼び名では周りが混乱するだろう」
「そ、それもそうですね」

自分達は単なる同姓同名ではないのだ。
そのことが何だか特別なように思えてクスリと笑った。

「・・・・・・・・・・何が可笑しいんだ?」
「すいません。何だか嬉しくて」
「嬉しい?」
「はい」

笑いかけると戸惑ったような琥珀の瞳。
友人がよく俺の眼を褒めてくれたりするけど、自分もこんな綺麗な色をしているのだろうか。

だとしたら凄く嬉しい。



「・・・・・お前は綱吉でいいか」
独り言のように呟かれたことに首を傾げる。
それに何故か目線を外されぼそりと言われた言葉に眼を瞬く。

「え?」
「・・・・・]だ。
向こうではそう呼ばれていた。
元々綱吉とは呼ばれ慣れていないから、此方の方が俺としては助かる」
「デーチモ・・・」



同じようにまた一つ繰り返してから、手を差し出した。
不思議そうにしたデーチモに笑って挨拶だよと言うと、彼もぎこちなく手を差し伸べてくれる。
残りの距離を自分で詰めて、手を握って笑いかけた。




「じゃあ改めて宜しく、デーチモ」
「・・・・・宜しく頼む綱吉」






















この時。

君と同じという奇跡のような偶然が 俺には必然に思えたんだって言ったら 君は笑う?




















<...fine?>

































やっちまったなツナ×ツナ。

でもずっとネタとして書きたいなーと思っていたという代物。

抜けてるところがあるので帰って来たら書き直しそうだ(苦笑


あきゅろす。
無料HPエムペ!