俺の好きと君の好き

何だろうと、ふと思う時がある。




「友人」、なのは当たり前だし、もう「家族」のようなものでもあるがそれもちょっと違う。
では近しいという意味で「恋人」なのかと冗談半分で考えてみてもそれまた違う。
そういう人達には悪いが、そんな軽々しいものではないのだ。

いや、・・・そうじゃないか。
当て嵌まらないというか、どうもしっくりこないのだ。

それなのに言霊の威力だけを信じて、繰り返し尋ねるのは。
俺と同じになってくれないかなんて神頼みを、柄にもなくしているからかもしれない。




























【 君の好きと俺の好き 】































「んーー・・・」
首を捻って自分の中の少ない単語を色々リストアップしてみるが、どれも違う。
一旦考え出すとちょっと没頭してしまうのは昔からだ。
昔、体育の時間に声をかけたのはちょっとしたことで、今では彼がいない生活など考えられない位すっかり夢中になってるのと同じように。


「・・・・山本、あのさ」
「ん?なんだツナ」
顎を反対側の手に移しながら唸っている俺に声がかかったので思考を直ぐに切ってツナに眼をやる。

「どうかした?」
「え、なんで?」
「なんでも何も、眼の前で俺の顔見て唸られちゃあ流石に気になるよ」
呆れながら言われ、そんなに唸ってたかー?と首を傾げると苦笑してツナは頷いた。

「何か悩んでるなら、俺でよければ聞くけど」
昔であれば相談なんてすると物凄く困った顔をしていた少年の面影が、今は薄いことに今更気付いた。

それが・・・、少し寂しいと感じるのは何故だろう。

困りながらも一生懸命考えて、自分の為に悩んでくれるということが嬉しかったからだろうか。
いや、それは今でも同じだ。



(あ、そっか)



俺はツナが、自分を頼ることがなくなったことが。
寂しいのか。



急に気付いた。



「山本?」
「いやなんでもないのな。馬鹿が考え込むと碌なことねーし?」
沈黙してしまっていた俺に、今度は些か心配そうな瞳を向けてきてくれたことに、何処か喜びを感じている自分。
やや呆れながらなんでもないと言って笑った。

それに、





開きかかった口を閉じた。
俺たちは一体どういう間柄かなんて、きっと困らせるだけだ。

それに、聞いたらこの子は迷わず言ってくれるんだろう。





「な、ツナ。俺達って親友だよな?」
「いきなりどうしたんだよ山本?」

不思議そうな顔をするのにいいからいいからと適当なことを言って先を促す。
それにちょっと恥ずかしそうにしながらも、ツナは微笑んだ。

「当たり前だろ?
山本と俺は、今までもこれからも。ずっと親友だよ」
「・・・・・ッだ、よなっ!
じゃさ、ツナ俺のこと好き?」






もうなんなの〜?と笑いながらも、くれた答え。
嬉しいのに、胸が締め付けられて。

酷く、後悔した。

やはり違うのだという事実を、改めて知って。



きっと、これからもそれは変わらないんだろう。
自分が彼を大切だという気持ちが変わらないのと同じように。

でもそれでいいんだ。
この子の特別になれたらどんなにかいいだろうとは思うが、それ以上を望んだら、消えてしまう何かがあるともわかっていたし。

怖くて踏み出せない、・・・弱い、自分。
だから、俺たちって一体どういう関係なんだろな?なんて。
冗談でも。とても怖くて聞けなかった。
なのにこんなズルイことを聞いたのは、返ってくる答えがわかっていたから。






「・・・・・・・俺も、俺もツナと同じ」






それか、俺はこの子に言って欲しかっただけかもしれない。
自分とは違う意味でも、嘘でもなんでも。

俺と同じ言葉を。







「ツナが好き。すんげー好き。大好き」







ツナに言われると、嬉しいのに切なくなる。痺れるような甘い呪文。
彼と同じことが嬉しいのに、違うことがどうしようもなく切なくて哀しくて苦しくて。

有難うと言って君がはにかむことが、それに拍車をかけてるなんて。

君は知らないんだろう。












君の好きと俺の好き。
とてもイコールになんてなってくれやしないんだ。










<...fine>





































何か中途のまま出てきた代物に加筆してみました。
十年後のような気もしますが、まあ折角だから此処にアップ(殴

2008.1.16



あきゅろす。
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