2限目
この先生から説明をうけてくれと忙しそうにいってしまった事務の人にお礼を言ってから、目の前の先生に挨拶をする。
「沢田といいます、宜しくお願いします!」
「んぐ、ふぁふぁだ?」
弁当箱に収まったチラシ寿司を頬張っていた若い教師が振り返って眼を瞬き、
見覚えのある顔にツナは驚愕に眼を見開いた。
「なっ、山本ぉ!?」
「やっぱツナか、久しぶりだなーっ!」
顔を輝かせて立ち上がった青年 ― 山本武に抱きしめられ、ツナは眼を白黒させる。
「えっ?えっ?どうして山本が此処に!?」
「此処の教師だからに決まってんだろー!
一年ぐらい前から勤めてんだけどなっ。
ツナこそどうしたんだ?」
「俺はディーノさんの臨時で」
「ディーノさんの?
知り合いかなんかか?」
「うん、大学ん時の先輩で、」
「へぇ、・・・・仲良いのなー」
「そんなことないっていうかお世話になってただけだから」
「ふーん?
ま、何にせよまたツナに会えてすげー嬉しいのな♪」
「うん、俺もっ。
山本と一緒に仕事できるとか凄い心強いや」
にかっと昔と変わらなず笑う山本にツナも吊られて微笑んだ。
【 2限目 】
「ほい。これクラスの日誌と名簿と注意事項な」
担当のクラスまで案内がてら、歩きながら手渡されたものにツナは少し沈黙した。
「・・・注意事項?何それ。
てかなんかやけにこのクラス人数が少ないんだね」
「んー・・・ ま、行ってみればわかるって」
「うん?」
山本の眼が珍し泳いだことが少し気になったが、名簿の名前を覚えていくことに没頭し始めてたツナはそこまで気にすることはなかった。
「はい、じゃー席つけなー。
新しい担任の先生紹介すっから」
教室の扉を開くと同時に声を出した山本に、席を立っていた生徒がそれぞれの場所に戻る。
しかし我関せずで動かないものもいれば、目線のみは見知らぬ青年を見ているものもいた。
軽く紹介してもらった山本と入れ替わるようにしてツナは教壇に立つ。
前を見ると高校生とは思えない程静かな張りつめた雰囲気に気圧されそうになる。
(うわー・・・久しぶりだなー、この感じ)
緊張しながらもワクワクしてきたツナは、腹に力を入れる。
さあ、これから此処が自分の場所だ。
恐れることなんてない。
今の気持ちのまま、ツナはにっこりと笑った。
「えっと、初めまして。
沢田綱吉といいます。ヤンツナって呼んでくれたら嬉しいです」
荒んだ空気が洗浄されるようにツナの周りのみ柔らかくなる。
それに幾人かが軽く眼を見張り、そのうちの一人が面白そうに口端を上げた。
(へぇ・・・、まさか先公だったとはな)
笑うとますます好みの容姿のようだ。
まあ自分は泣き顔が一番好きなのでまだわからないが。
(どうやって虐めてやるかが肝心、だな)
手始めに何をしてやろうかと考えたところでふと眼が合い、微笑まれる。
「宜しくね、リボーン君?」
「・・・・・・宜しく」
笑顔に吊られて思わず普通に返してしまう。
言ってから自分に驚いた。
何やってんだ、俺。
周りの生徒の何人かも変なものを見る眼で見ている。
主に腐れ縁の奴らで、気色悪いな何いい子のお返事してんだとうとう腐ったかという視線だった。
(・・・・面白くねぇ)
後でパシリで鬱憤でも晴らすことにする。
また楽そうなものが来たなと思っていたが、そうでもないらしい。
新しい玩具は安物ではないことは確かだった。
(まあ、その分虐め甲斐がありそうだけどな)
攻略が難しい程燃える性質だった生徒は、新任教師が出て行った扉を見やり、舌なめずりをして笑った。
「ツナ、危ないと思った時は俺呼ぶかすぐ逃げろな」
教室から出て一つ目の廊下の角を曲がった辺りで軽く言われる。
一体何の話だろうか。
「何から?」
「あいつ等。さっきの生徒達な。
あのクラス問題児ばっからしいからさ」
俺は面白い奴らと思うんだけどなーそう言って山本はからっと笑う。
笑い事じゃないでしょと突っ込んでから少し前に見たばかりのクラスの子供たちを思い出す。
これといって問題のあるものはいなかったと思うが。
「見た限りじゃ普通のクラスだったと思うけど・・・」
「だよなー。
俺も体育位しかもってないからわかんねーんだけどさ。
他のセンセ達は授業終了前に毎回泣きながら出てくんだよなー」
「え・・・泣い、」
そこでチャイムが鳴り、次が受け持ちの授業らしい山本が些か慌ててポケットから何かを取り出しツナに差し出す。
「じゃ、これ催涙ガスとスタンガンなー」
「はい!?」
手渡されたものと最後にされたアドバイスにツナは固まった。
「押し倒されたら遠慮なく股間蹴り上げろなー」
俺、男だよ!?
ちょっと先行きが不安になったが、
そんなクラスを纏めていたなんてディーノさんはやっぱり凄いなーと感心しているだけ、この時まだは暢気だったとツナは後に思うことになる。
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