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「もう嫌だってば!ついて来ないでよ!!」
「そんなご遠慮なさらず!鞄お持ちします!10代目!」
「いらないしその呼び名もやめてっていってるだろ!」
「す、すいません。でも、あの鞄を!」
「・・・・? 何で鞄に拘るの?
いつもはそこまで言わないのに」
「そ、それはですね・・・!」
「?」
何故真っ赤になるんだろう?
















「・・・・・・・・・・・また?」
雪崩出てきた色とりどりの包装紙に包まれたものに顔を顰める。
毎年毎年何が目的かわからない。
大体下駄箱に食べ物を入れるなんて不衛生な行為をするのは相手に対する嫌がらせだよね。
溜息を吐いて甘い匂いが微かにするものを拾いあげる。
「違反だって言ってるのに」

全く忌々しい。
雲雀恭弥は2月14日も、チョコも嫌いだった。






















【 我らが番長 1 】






























下駄箱と応接室全てからチョコを回収した雲雀は、バッタリと草食動物に出会った。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

呆気に取られた顔をしている。
いつもは怯えるか悲鳴をあげるかなのに。
そこで彼の視線が自分が抱えている巨大なダンボールにあるのだと気付く。
抱えきれないほどのチョコ。
知らない者が見ても当然雲雀が貰った(押収した)ものだとわかるだろう。

(好きで貰ったんじゃないんだけど・・・)
・・・・何となく居心地が悪くなった。
この小動物には見られたくなかった気がする。
いらない勘違いされたら嫌だった。



雲雀の心境を知ってか知らずか、ツナはほぇーと関心したように言い放った。
「雲雀さんておモテになるんですね〜!」
(・・・厭味?)
雲雀は青筋を浮かべた。
「君に言われたくないんだけど」
「・・・?
何でですか?」
ツナは気付いていないが多大な人気がある。
一般のものに全くだが、一部の優れた者達には熱烈にアプローチされている。
知らぬは本人だけである。




「あ、此方にいらしたんですか!」

そこへ空気を読まない少年がやってきた。
「げッ、獄寺君」
(撒いたと思ってたのに・・・)
素直に感情を顕にするツナに獄寺は少々悲痛な顔をするが今日はめげずに食い下がる。
「十代目!!
あ、あの、これ!!!」
「へ?」
両手を綺麗に揃えて勢いよく突き出されたものは如何見ても、包装されたチョコだった。
それはわかる。
でも自分に差し出される理由も意味もわからなかった。

困惑しながらも恐る恐る尋ねてみる。
「・・・・これが?」
どうかしました、か?
「よかったら、
う、受け取って下さい!!」
「うぇ!?」
(何で俺に!?)
獄寺君が貰ったやつでしょそれ!?
自慢!?嫌がらせ!?
それともチョコ苦手なの!?
ツナは意図が理解できず混乱する。

(うぅ、やはり芳しくないお反応!)
獄寺は早くも後悔し始める。
予定としては鞄にこっそり入れさせてもらうつもりだったのだが、鞄を預けてもらえなかったので直接渡すことにしたのだ。
だがツナの様子は予想した通りの反応だ。

(顔赤っ!
あれ、半分は青・・・? げっ今度は緑だし)
獄寺の顔色が面白い程に目まぐるしく変色している。
正直怖い。
(獄寺君体調でも悪い・・・?)
ちょっと心配になる。

ツナからの眼差しを勘違いして獄寺は内心で悶える。
(うわああああ十代目が俺を見つめてらっしゃるうううっ、何て幸せ・・・っ!
って違う!
や、やっぱ今はご迷惑だったのか!?鞄かロッカーのが良かったか!?)

次第に涙眼になってきた獄寺に、ツナは目を白黒させながらもやっと受け取った。(このままだといつまでもこうしていそうだから)
「・・・・・・・あ、有難、う」
で、いいのかな・・・。
自分でもかなり引き攣った顔つきだったと思う。

「あ、あ、あ、有難うございます!!!」
ぱあぁっと笑顔になり、獄寺はそのまま嵐のように去っていった。













気まずい・・・。

獄寺が去って、10分程してから何となくツナも思い始めた。
特に獄寺君が来た後くらいから、急激に雲雀の機嫌が損なわれた気がする。
空気が重い。寧ろ重圧と化している気がする。
何でだ。
俺が何をした。
どちらかといえばしたのは獄寺君だ。

でも、この空気は気まずい。
重い。
このままだと確実に動けない上に帰れない・・・っ。
それは困る。
(取り合えずなんか、話題。笑えるような、和ますような・・・!!)
それの為なら自分で自分が傷つくような痛いことでもいいとツナは捨て身の発言をした。

「はは、初めてチョコ貰っちゃいましたー(超棒読み)」
「・・・・・・・・・・・・・」







ブリザードが吹き荒れたようだったと後にツナは語った。









『男からでしょ?』
『何が嬉しいの?』
『一つだけなんだ』

とか返ってくると思っていたのに・・・!
滑ったらしいと勘違いして、もう終わりだとツナが心で泣いた時。
雲雀は徐に抱えていたダンボールを手放した。
山になっていたチョコの箱がバラバラと転がり落ちる。

「あ、雲雀さんチョコが、」
「・・・だったら僕もあげるよ」
「へ?」
拾い上げた包みの一つを適当に開け、徐に齧る。
そしてろくに咀嚼もしないまま、
「む!?」
雲雀はツナに咬み付いた。










「・・・三倍返しだから」
雲雀が唇を離したのは息も絶え絶えでツナの意識が飛びそうになる寸前。

そういって去っていった雲雀の言葉の意味をツナが理解するのは、チョコの口付けから10分後のことだった。


「お、俺のファーストキスーーーーーーーーーーーっ!?」















仄かに甘い口内は、誰が言い始めたかは知らないけども、レモンの味では全然なくて。

ほろ苦い、ビターな味がした。

まるでそれがあの人を象徴しているようで・・・。

「これは悪夢だーーーーーーーー!!!」




ツナはそれ以来暫くチョコ不審になった。
だから当然獄寺のチョコも食べなかったということで。













次の日

「十代目!
あ、あの昨日のチョコ食べてくれ、」どきどき

キッ!

「チョコなんて大ッ嫌いだーーーー!!!」
「(がーーーん!!!)」 











一番不幸だったのは獄寺だったかもしれない。








「・・・・・・・・チョコも悪くないかもね」
雲雀はわりと悪くない機嫌でパキンと謙譲品を口にした。























<...fine?>



















10代目のキスの味はチョコの味♪
ありきたり噺ですがいかがでしょう?

獄寺はチョコを渡した時、雲雀には気付いてません。
ツナしか見えてなかったので(笑)






































<俳優控え室>




「・・・・・・・・・・・・」体育座りツナ
「何わかりやすく落ち込んでるの」
「いや、本当に、するって、聞いて、なく、て・・・」
「やっぱり初めてだったわけ」
「そうですけど・・・ っって雲雀さんっ(赤)!?」
「今気付いたの?君って鈍いよねホント」
「ひゃああああそれ以上近づかないでくださ、」
「(ムカ)・・・何それ。如何いう意味?」
「恥ずかしすぎて、も、耐えられないんですよ〜〜〜っ!
あーーーこんな赤い顔見られたくなかったのに(真っ赤)!!!」涙眼
「・・・へえ」
「な、ナンデスか・・・?」
「もう一回咬みつきたくなっただけだけど?」
「khgdrsclkjふdyrxyflhg;うgfっっっ!!!」脱兎

「可愛過ぎること言うあの子が悪いよね(にっ)」



この後、真っ赤で泣きながら逃げるツナを、やけに嬉しそうに追い回す雲雀をディーノが見たとか見なかったとか。
(止めたディーノさんはボコられました)














あきゅろす。
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