雲雀篇1

「あー・・・今日も平和だなぁ」

ぽかぽかと気持ちの良い陽気。
一人寝転びながらのんびりできることのなんて幸せなことか。
ああ平和って素晴らしい。


「此処にいたのか駄目委員長」
「・・・・・・・・・・・・さよなら、俺の平和」

平和を満喫していたところにかかったチャーミングというのがピッタリな声に。
だがしかし実態はとんでもない危険人物にツナは一気にテンションが転落していくのを感じながら呟いた。
「あ?何いきなり意味不明なこと言ってんだ?」
「俺の正直な心の叫びだ。
で?何しにきたんだよリボーン」
「アイツを捜しにきたついでにお前を見かけたからな。
構ってやろうと思っただけだゾ」
嬉しいだろうとニヒルに笑う赤ん坊に全然嬉しくない上に是非ともほっておいて欲しかったツナはそりゃどうもとだけ返しておいた。
下手なこと言ったら絞められる。

「あの人なら学校には来てるよ。校内の何処かにはいるだろうから捜してみれば?」
「来てるのは知ってるけど簡単に見つかりゃ苦労しねーんだよ。
お前も手伝いやがれ」
「それが人にものを頼む態度かよ…。ったく」
渋々と立ち上がるツナに、リボーンは意外そうに眼を瞬いた。

「文句も言わねーで手伝おうとすんなんて珍しいじゃねーか」
「手伝わなかったらどうせなんかするんだろ。
いい加減お前の行動パターンはわかる」
「・・・・チッ、つまんねーな」
「やっぱ何か企んでたんだなお前…」
何やら出そうとしていたものを仕舞ったらしいリボーンにツナは顔を引き攣らせる。
その反応に少しは満足したのかリボーンはお決まりになったような台詞を言った。

「オメーがさっさと守護者になれば俺は何もしねーぞ」
「お断りだって言ってるだろ。
意味わかんない世界に俺を引き摺り込むな」

同じくお決まりの台詞を返し嘆息したツナは、軋むドアを開いた。

























【 雲雀編 1 】




























俺の名前は沢田綱吉。
並盛中学校の何故か風紀委員なんてものをやっている。

別に普通の委員会だったら問題ない。面倒だし俺が駄目駄目でも他の人が優秀だろうから。
唯一問題なのがなんで風紀委員会が不良の巣窟なんだっていうことだ。
その勢力は学校のみならず並盛地区全体に及んでいるらしい。
去年の夏祭りではショバ代とかを徴収してた。
どこのヤクザだ。

しかも何故か俺はそこの委員長だったりする。否応無しに風紀委員長総選挙で決まったのだ。
いやいやいや何でだよ何あの圧倒的って言ってもいいくらいの票数。あの時は本気で集団苛めかと思った。
大体なんで風紀委員長の選挙があるんだこの学校。

理由はわからないし周りは怖いしで正直逃げ出したかったけど逃げ出しても何だか何処までも追いかけてきそうだったので、嫌々ながらもなんとかやっている。
風紀委員全員の期待の眼差しを浴びながら日々どうやって辞任しようか考えながらだけれども。





最近では色んな人が俺の周りにやってきて騒動を起こしてくれちゃってくれるものだから屋上で授業も委員会の仕事もさぼってるのが唯一平和な時だったのに。
ちらと横をちまちまと歩く小柄な姿を見下ろす。
くそうこの厄災2め。お前が来なきゃ草壁さんが来るまで俺はダラダラできたんだからなどうしてくれるんだこの垂れま、
「・・・・・・・・・・・・・今すぐその口閉じねーとぶっ放すぞ」
「ふふぃまふぇん」
普段使われているのがわかる硝煙の匂いにぞっとして、何時の間にやら口に突っ込まれていた金属に硬直しながら謝る。
っていうか何でわかったんだよというちょっと涙眼の俺に、それを元のカメレオンに戻しながらフンとリボーンは鼻で笑う。

「ヒットマンが読心術を心得てるのは常識だゾ」

知らねーよそんな異界の常識。

「まぁオメーの場合はそうじゃなくても顔を見りゃ一発だけどな」
「・・・・・悪かったな」
「いやわかりやすくて手っ取り早い。
ある意味楽に撃てる」
「ホントすいませんでしたーーー!!」


俺が情けなくも頭を下げているのは、俺が風紀委員になってから知り合った赤ん坊・・・、に見えるヒットマン。
なんでも咬み殺すのは好きだがボスの座には興味がない彼をマフィアのボスにしに来た家庭教師らしい。
態々イタリアから来日したマフィア最強の赤ん坊で、マフィア界最強と呼ばれるアルコバーレの内の一人でもあるという。

うん改めて意味わかんない。



まあ俺には全く持って関係ないし興味もないことからどうでもいいけど。
でも近頃コイツがあの人よりも俺にちょっかいをかけてる時のが多い気がするのは気のせいだろうか。

おまけに最近ではそのマフィアの後継者争いに必要らしい彼の守護者にさせようとしているのだ。
理由はそしたら彼もボスの座に興味出るだろうからという。
そんなんで興味が出たら世話ないと思う。


「許してやってもいいが、その代わり守護者にな」
「ならないってば。
それよりあの人探してるんだろ?」
「オメーが認めるのが先だ」
「趣旨変わってない?」
「じゃねーと色々するゾ」
「色々って何!?
前から思ってたけどお前ホントに赤ん坊なのかよ!」
「さーん、」
「ぎゃああああカウントダウン始まったーっ!?」
「ゼーロ。タイムアウトだな」
「なんで3の次が0なんだよどんだけだあああ!!」

「赤ん坊かい?」

その声に、ツナとリボーンは動きを止めた。
見れば階段を登ってくる人影。





マフィアの運命に結構乗り気で戦っているように見える並盛最強の不良。

でも並盛を愛しているのでボスになることに興味はない。

己のみを信じ、群れる人間を毛嫌いし、リボーンのスパルタには嬉々として応えている恐ろしい人物。



―――彼こそが捜そうとしていたその人、雲雀恭弥だった。



多分俺なんかよりよっぽどこの人の方がこの学校の風紀委員長には合ってるんだろう人に、ぎこちなく笑いかけてみる。
だってなんかこっちを見る眼が痛いし怖い。
「こ、こんにちは雲雀さん」
「やぁ、沢田綱吉。
赤ん坊と二人で何してるんだい?」
「ええええとですね、」

ヤバイ、この状況とパターンから言って次にくるのは

「まさか群れたりし」
「雲雀さんに会いたくて彷徨ってましたはいーーーっ!!!!」

うっわー泣ける程苦しいね!と内心自分の語彙の少なさに、ツナは咬み殺されることを覚悟した。




しかし雲雀はやや驚いた表情をした後、ポツリと尋ねただけだった。
「……僕に?」
「へ、はい、多分…」

返ってきた予想外の反応に呆気にとられて曖昧な答えを返してしまう。
途端雲雀の眉が寄る。
「多分…?」
「いえ物凄く雲雀さんに会いたくて堪らなくて矢も盾も溜まらずに!!」
声が1オクターブ下がり、地鳴りがしてきそうなオーラに気を付けをするが嘘臭いことこの上ない。

だが雲雀はすんなりと信じたのかならいいよとツナの横を通り過ぎ、行ってしまった。




一体何が良かったのやら。
よくわからないがとにかく命は助かったのだとツナは一人喜んでいたが、リボーンは驚きのあまり固まっていた。






(雲雀の奴、今確かに…っ!!)







リボーンは自分の生徒が嬉しそうに微笑んでいたのは見間違いだったのだと必死に首を振った。

あの初めましては咬み殺すの雲雀恭弥が恋をするなんて有り得ないのだから。









〈...fine?〉


























あれ?ギャグ予定が…


2008.1.14



あきゅろす。
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