授業参観

「なんで貴方までいるんですか!」















案の定不機嫌に雲雀兄さんを睨む骸に嘆息しそうになったがその前に突っ込むことがあった。


「いやそれはこっちの台詞だから!
なんでお前までいるの骸!?」
「酷いですね綱吉兄さん、いっつも一緒に登下校してるじゃないですか」
「うんそうだねだけどそれは校門前までだよね!?」

此処教室ン中なんだけど!!

「綱吉に一番愛されてる僕が呼ばれるのは当然でしょ」
「いやそんな規定ないですから!」
「戯言男が参観するなら僕も勿論兄さんを心行くまで堪能します」
「そんな行事でもないんですけどぉ!!?」

なんだよ堪能って!
お兄ちゃんの駄目なとこ見て何が楽しいんだーーーーーーーーー!!!!









授業参観が始まる6分前。

沢田綱吉は頭を掻き毟って目の前の兄弟達に怒鳴っていた。






































【 授業参観 】







































「明日は授業参観だが皆いつも通りにやればいいからな〜」









俺もいつも通りにするからー笑って言った金髪の教師に対し、
ほぼクラス全員がいえもっとちゃんとやって下さいこけてんじゃねーよなどと非難し、言われた教師が半泣きしているのを遥か遠くに聞きながら、

ツナは蒼白になって固まっていた。



























また今年も悪夢の日がやって来た。

この日だけは家に常時不在の両親達を恨む。




「っていうか両親揃って子供3人残して旅行行ってんなよ・・・」

少し荒んだ心境でツナが小学生の時からずっと新婚旅行に行っている両親に悪態を吐く。
何年行けば気が済むんだ、新婚気分もいい加減にして欲しい。
正直気持ち悪い。
ほんの少しの母親ナナに対する拗ねた呟きと、9割9分9厘の家光に対する呪詛を垂れ流しながら重い足取りで家へ向かう。


いつもはこんなこと思わないツナだがこういう日だけは泥沼に浸かった気分になるので無理だった。





授業参観、三者面談、体育祭、文化祭 etc...





どれも親に対するお知らせのプリントが配られる日だ。

棄ててしまえばいいのだが、後から担任に家に連絡がいくことになり、
結局バレることになるのでもうそれはやらない。
過去18回位やってその度に不機嫌になった兄と何故か弟にまで暴れられて家が崩壊するのでいい加減諦めた。
あいつらはをもっと自分の住みかを大切にするべきだ。








「あー・・・気が重い」

テスト返却日よりもどん底の気分のままツナは足を引き摺って帰宅した。























「授業参観?」
「はい、でも雲雀兄さんも授業があるから無理はなさ」
「行くよ、当然でしょ」

予想してたとはいえ、ますます気持ちが低下していく。

「綱吉に対して如何わしい眼を向けてないかどうか教師と全校生徒のチェックに行かなくちゃね」

授業じゃなくてそっち!?
規模広すぎだしそんなチェックしなくたって誰も俺なんか気にしてないから!

トンファーを取り出して機嫌よく素振りを始めた兄に一歩下がる。

「雲雀兄さん、来て欲しいのは山々なんですけど、」
「ワオ、嬉しいこと言ってくれるね」

大丈夫、ちゃんと綱吉と一緒に登校して下校も一緒にするからと言われ目の前が白くなっていく。
骸がまたキレること確実だ。

「それに久しぶりに並盛を見たいしね」
「・・・・・・・・・」

兄が自分以外にこの優しげな顔を浮かべるのは昔通っていた母校に対してだけだ。


昔から並高を愛して病まない兄に、今更来ないで欲しいなどと言える訳もなかった。












































絶対大人しくしてるという約束は、チャイムと同時に爽やかに入室してきた担任を雲雀が視界に入れた途端破られた。

「ねえ、キミ以外にもっとマシな教師いるでしょ。
替わってよ。
キミじゃ綱吉の上がるも成績上がらないじゃない」

(いきなりですかーーーーーーーーッ!?)

入ってきた教師の顔をみるなりつかつかと前に進み出てきた兄に一気に血の気が下がる。

「す、スイマセン!ディーノ先生」
慌てて席を立ち前に走り寄る。
初対面の人間にこんな失礼なことを言われて流石におおらかな気性の担任でも気分を害すると思っていたが、
予想は外れて気のいい担任はあんぐりと口を開けて叫んだ。

「恭弥!?」

(え?知り合い?)
初めて会った者ではない雰囲気に、雲雀の服を引っ張ろうとしていたツナは動きを止める。

「煩いな、名前で呼ぶなって言ってるでしょ」

驚いているディーノに雲雀はむっとして眉を顰める。

「お前誰の保護者なんだ!?」
「綱吉だよ。
僕の可愛い愛弟」

「「「・・・・・・・・ッ!!」」」

雲雀がツナを抱き寄せると同時に室内の何人かが立ち上がる。
皆一様に整った容姿を不快に歪ませ、今にも雲雀に飛び掛りそうだ。

しかし、ツナの親類らしき男に危害を加えるのはツナに嫌われることにも繋がる。

自慢げに雲雀に腕の中に抱えられ、ヒーっと悲鳴をあげそうになっているツナはそんなクラスメイト達が悶々としているのには気付ず別のことを気にしていた。


(頼むから此処でベタベタしないでーーー!!
この年でこんな子供っぽい扱い受けてるだなんてバレるとか恥ずかし過ぎるからーーーー!!)

泣きそうな生徒には気付かず、担任は嘘だろというように茫然としている。

「お前等が、兄弟・・・・?
に、似てねー・・・」
(この優しくて超可愛いツナと、
天上天下唯我独尊気に喰わないのは咬み殺すが信条の恭弥が兄弟だなんて信じろって方が無理あるよな?)

心底信じられないというか信じたくないツナを嫁に貰った時姑がコイツとか悪夢だという顔をした担任にツナは哀しくなる。

うう、先生酷い。
俺が気にしてることを・・・



「黙りなよ、気にしてることを無神経に・・・」

青筋を浮かべている兄にえっと眼を見開く。
まさかバイオレンスな処と俺様なところを抜かしたら完璧な兄が気にしているだなんて思っていなかった。

なんだか少し嬉し

「血が繋がっていないってこと、僕はまだ諦めてないんだから」

そっちですか!?

「兄弟でさえなければ僕と綱吉の間にはなんの問題もないのに・・・」

いやいやいやいや有りまくりですっていうかその発言が問題です。

「まあ繋がってようがいまいが僕は気にしないんだけど、
綱吉が世間体を気にするかなって」

世間体もそうだけどその前に同性っていう方が俺は気になります雲雀兄さん勘弁して下さいクラスメイトの眼が痛いですまるで鋸状態です。

もうこんなのは耐えられないとツナは本来の今日の行事を思い出させる。

「せ、先生!授業を進めないと!
雲雀兄さんも早く後ろに戻って下さい!」

ぐいぐいと雲雀の背を押すツナに雲雀はそれが嬉しいのかディーノを咬み殺すのは一先ずやめて後ろへ戻る。


















自分も席に戻ったツナは、クラスメイトの痛い程の視線を我慢しながら願う。

(ああ!もうどうかこのまま少しでいいから無事で終わりますように・・・!!)















沢田家の次男が切に願ったことも虚しく、この後も授業は一向に進まず混乱だけが続いた。





















<...fine?>











「お疲れなのなツナ!」
「やま、もと」
「はは!憔悴ってカンジだな」
「うう、ごめんね、まともに授業できなくて」
「いーって。
それより校舎壊れなくてよかったじゃねーか」
「それは雲雀兄さんがこの学校大好きってだけだから」

その愛情の一割でも良いから我が家にも持って欲しい。





































ディーノさんと雲雀の腐れ縁内容、

ツナに絶賛片思い中のクラスメイト達、

骸が後半大人しかった訳などはまたいつか(笑)



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