本日開店4

「ねえ、席。空いてる?」
「申し訳ございません、只今準備中でしt」




休憩を終えディナータイムへ向け準備をしていたツナは振り返り、笑顔のまま硬直した。





気配も無く入ってきた客はそれを面白気に眺め、笑んだ。
「やあ、元気そうだね」







































【 本日開店4 】







































「最初はまさかって思ったんだ」
客が去ったアイドルタイム。

二階の洒落たテラスにて男は優雅に足を組んで、其処が初めから自分の場所であるというかのように座っていた。
隣の席には立っていますからと断わったのに僕の言うことが聞けないのといって無理に座らせたオーナー(仮)が一人。
その顔は笑顔ながらも何処か蒼褪めている。





「だってあんな啖呵を切って出てったんだからね。こんなに早く戻って来てる訳がない、そう思うのが普通だろう?」
優雅に口付けていたカップをソーサーに戻した男は、だらだらと汗をかいているツナを見やる。

「まあ、僕が君を見間違えるわけがないから。それはないんだけどね」
「うあっ?」
何処か自信を持った瞳で言い、男はついとツナの顎を持ち上げ自分と視線を合わせる。
長い睫毛に縁取られた、獲物を捕らえた猛禽類の瞳で男は優しげに尋ねた。





「ねえ、どうして此処にいるの。君」
勿論順を追って説明してくれるよね。

そう言って説明しなければこの距離を縮めるよと言わんばかりの言葉に、ツナは諦めて降参の意味で頷いた。
「・・・・わかりました、雲雀さん」

































「雲雀恭弥?」
「あれがか」
「・・・・・・・・・・・」

大層気に喰わなそうにテラスの窓から男―雲雀恭弥を睨んでいた二人に、スカルは呆れた。
初めて見たらしい。ありえない。
この人達は本当に飲食界に携わっている人達なのだろうか。
「・・・・・雲雀恭弥っていったら、25歳という若さで日本・海外を問わず38以上の和食レストランを営み、片手間で9つの外資系高級ホテルまでを経営している飲食界じゃあ知らない人はいないって程の男じゃないか」
「俺は知らねえ」
「名前しか聞いたことねえな」
「・・・・・・・・」
この飲食界の異端児コンビが。
ただ興味が無いだけというのは知っているが少しは周りに興味を持てと言いたくなる。
(・・・・・まあ俺も其処まで位しか知らないが)

先ほど言ったことも此処へ来る前に部下が熱心に話していたことを適当に返事をしながら聞いていただけのことだし。
元々メディアには皆無と言っていいほど顔は出さない男らしいので、この他人なんてどうでもいいを体現しているこの人達が知らなくても仕方ないかもしれない。
「んなどうでもいい情報はいいからツナとアイツが如何いう関係なのか説明しろ」
「はぁ?知るわけないだろう」
ツナと会ったのはたった一週間程前のことだというのに。
根堀葉堀ツナのことを本人から聞いては笑って流されているあんたならまだしも、話しかけようものなら誰かに殴られてる俺に聞くか?
「ちっ、遣えねえ」
「・・・・・・・・・・・・・」
そもそも此処が地元だったということさえ知らなかったのに無理を言うな。
そう言ってやりたいがもう何も言わない。
何かもう色々無駄だ。



(・・・・寧ろ聞きたいのはこっちの方だ)
スカルは此方に背を向けて仲良く話し込んでいる二人の背中を何処か面白くない気持ちで見つめた。




只の仮のオーナーだというのに、こうも気になるのは何故なのか。
わかりそうでわからないこのカンジは一体何なのだろう。

窓に薄っすら映った自分の顔を見て、スカルはふと気付いた。
隣で齧りつくように見ているリボーンと、リボーンほどではないが気に喰わなそうに雲雀を睨んでいるコロネロ。

この二人と自分は今似たような顔をしている。

(・・・・・・・・何をやっているんだ、俺は)
もうディナーのセットくらいは終わらせていなければいけないという時間なのに。
自分は働きもせずオーナーとそのお客が話しているのをこんな顔をして睨んでいる。


もやもやとするものを払うように首を振り、何かに気付く前に背を向ける。


「じゃあ、俺はホールのセットしてきますから。
キリのいいとこでいい加減あんたらも働いて下さいね」
「るせえ」
「命令すんなコラ」
「・・・・・・ツナに怒られてもいいなら好きにしてくれ」
「「誰も働かねえとは言ってねえ」」
「・・・・・・・・・・・・・・」

スカルは目を覆いたくなった。









リボーン先輩は初日からわかっていたことだが、どうやらコロネロ先輩もツナのことが好きらしい。












そして恐らくは、・・・・・自分も。













「・・・・・・・・・・・何て面倒なことになったんだ」
来た当事とは比べ物にならない程広く綺麗になった階段を下りながら小声で嘆息しながら呟く。




相手が男とかそういう細かいことは如何でもいいが、ライバルがあの二人というのがなんとももの悲しい。
本気になったって勝てる見込みは確実にゼロに近い。

それにこれは単なる勘だが、ツナを想うものは他にも多々いる気がする。



(・・・・まあ、焦る必要もないか)
今更だ。



相手があの二人だろうと、何人いようと自分には関係ない。
最終的に決めるのはツナだし。
「俺は俺に出来ることをするだけだしな」

意外に自分は諦めが悪かったらしい。





















少しも譲ろうとは思っていない自分に少し驚きながら、スカルは緩んだタブリエを締めなおした。








<...fine?>
























































ピピピピ(電子音)

「・・・・(非通知か)」

ピッ

「スカルだ」
『よう、元気してるか?』
「!!家光!お前一体今何処n」
『あーあーそう嬉しがるな、また今度聞いてやるから』
「どんだけポジティブなんだお前は!」
『それよりさ、もうツッ君はそっちにいるのか?』
「ああ、よくわかってるな」
『愛だよ』
「切るぞ」
『そう急くなって、まだ用件言ってないだろ〜?』
「なんだ、今こっちは準備で忙しいんだから手短にしろ」
『うんじゃあ、一言だけな』
「?(一言?)」
『書置きの追伸のこと忘れるなってあいつ等に言っておいてくれ。
勿論、お前もだぞスカル?』
「・・・・・・・・ッ!?」




(自分が自覚して前向きになっているこのタイミングでかけてくるとは、流石狸・・・ッ)




それだけだ、店頼むぞ〜といって切られた携帯を握り締め、スカルは血の気が下がっていくのを確かに感じた。






























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