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ツナは困っていた。







「・・・・あ、あのー」
目の前に茫洋と立って、此方を見下ろしている人。
この人はどうやらボンゴレ初代らしいのだが、

『貴様の覚悟、しかと受け取った』

そう言った後から全くの無言なのだ。
(しかもずっとこっちみてて居心地悪いし・・・)


一体如何すればいいのだろうか。

何かしら自分の反応を待っているとか?
わからない。

というか読めないのだ。
この人は。
何を考えているのかさっぱりだ。






ツナはもう一度ちらと見上げて、吸い込まれそうな眼にぶつかり慌てて眼を逸らす。
妙な沈黙が辺りを漂っている。

もう何かが限界に迫った時。




ぽつりと、男は呟いた。











「・・・・・忘れた」










「・・・は?」

思わぬ言葉にツナは抜けた声を出してしまう。
それに反応したのか、男は続けて言葉を口にした。

「何を言おうとしたか、忘れた」
「・・・・・・・」

































【 我が魂を 君に捧ぐ 】


































(・・・えっと、この場合何て言えばいいんだろ)
残念でしたねじゃ意味がわからないし、でもなんか落ち込んでる(?)みたいだし、何か、何か言わなきゃダメなような気が・・・。


ツナが必死に慰め(?)の言葉を考えている間に、何かブチリと嫌な音がした。



「・・・T世、貴様いい加減にしろ」



声と共につかつかと初代に近寄った男に、ツナは眼を見開いた。
(うわ!ザンザスにそっくりだ・・・!)


名誉だか不名誉なんだかわからないことを思われているとは知らない男は初代に詰め寄る。
胸倉を掴み上げそうな勢いだ。
「重要な継承の場で、忘れただと・・・?ふざけるのも大概にせんか!」
「・・・煩いぞ、U世」

無表情ながらも迷惑そうな顔をした初代にU世と呼ばれた男の眉間に皴が寄る。
他の歴代ボス達は呆れたように其れを眺めている。
慣れているようだ。


「まあいい。取り合えず継承すればよかろう」
「な!?」
「では栄えるも滅びるも好きにせよ、ボンゴレ]世」
「・・・・・ップリーモオオオオオオッ!!!」


額を撫でられ、さあ済んだとなんだかダラダラと立ち去っていく初代の後を適当が過ぎると怒鳴りながらザンザスに似た男が追い、
さらに歴代の大空達がその後に続いていく。
何人かはツナに「すまないな、]世」「近いうちにまた」などと言って頭をわしわしと撫でたりして去っていく。

そんな彼等をぼさぼさになった頭を押さえ、呆気にとられながら見送る。
血生臭い歴史を持つ彼等は思ったよりも緩い雰囲気らしい。

ふと、最後の一人がいなくなってから自分はどうすればいいのかと思った時、再び声がかかった。



「]世、」
「うわ!?」
突如として出現した男に、すっかり気を抜いていたツナはぎょっとする。
初代はそれを気にした様子もなく地べたに座り込んでいるツナに眼線を合わすと、頬をそっと包み込んだ。




「“お前を、待っていた”」




「・・・・え?」
「それが、言いたかった」






それだけだと言ってほんの少しだけ口の端を上げた人に、思わず見惚れる。
自分も何か言おうとして口を開こうとする前に、光があふれ出す。

髪と同じ色に包まれ、男の姿は溶けるように消えてしまった。





































「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・遅い」

一定のリズムで指で腕を叩いていた雲雀は、切れ長の眼を不機嫌に細めてぼそりと呟いた。
「もう、コレごと咬み殺しても。いいよね」
「何もよくないぞ雲雀」

同じく黒いオーラを発しながらもじりじりと変化を待っていたラルに、顔も向けずに雲雀はリングを取り出す。
「僕は気が長くないんだ。
デートの時間を守らない子は、おしおきだよ」
「誰と誰のデートの時間だ。ふざけてるのか貴様?」
「野暮なこと聞くね、君」
「・・・・・・・」

馬鹿にしたように一瞥した雲雀にカッと眼を光らせたラルがボックスを出そうとした時。



変化は訪れた。






突然雲雀のボックス兵器から少しずつ放射状に溢れ出した光に、その場にいたもの達は瞠目した。
「なんだ!?何が起きている!?」
「恭さんこれは!?」
「球針態が・・・・・・、壊れる」


冷静に雲雀が呟いた時、それは崩壊した。

凄まじい音が室内を占拠する。







辺りを眼を開けてはいられない程の砂埃が舞い、壊れた球針態の上に立ち、現れたその少年に。




その場にいたもの達は皆、息を呑んだ。












「・・・・あれは、」
「誰だ!?」


「・・・・・・・・・・・・?」
自分の姿を認めた途端眦を吊り上げたラルと、無言で自分の獲物を構えた雲雀とリボーンに。
新たな力を得たツナは訝しげにする。


「ワオ、沢田綱吉。
随分遅いと思っていたら、何処の馬の骨かもわからない男と仲良くじゃれていたみたいだね」
「・・・・何の話だ」

話が見えず、ツナは問い返すが、雲雀はリングに炎を灯しただけだった。



(球針態から出れば、雲雀に何かしらされるとは思っていたが・・・)

だが、この殺気には違和感がある。
自分へのものもあるのだが、その大部分が別を向いている。

その怒りの矛先が何処なのか、探そうとした時、

















「俺の]世に牙を向けるとは、いい度胸だな」
「!?」


















妙にエコーのかかった声が響き、振り返ったツナは顔を引き攣らせた。
「ボンゴレ、T世!?」

何故此処にいるんだ!?
























そう、雲雀は本気で怒っていた。







ツナの直ぐ後ろにいた男に。






















「君が誰とか、どうやって僕の球針態に入ったのか。興味深いところだけど、」
おもむろにボックスを取り出し、開口した雲雀は笑った。

「此処で君は咬み殺しておこうか」
「待ッ、」
「「同意見だな」」
「なっ!?
待て!何故ラルとリボーンまで!?」






雲雀と同じオーラを発して進み出た家庭教師二人にツナは突っ込んだが、





「]世。
種火を消すまで少し待ってくれ」
「「「消えるのはお前(君)の方だ(よ)」」」



「・・・ッ!お前等全員人の話を聞けーーーーーーー!!!」






聞いている者は一人もいなかった。























歴代最強なご先祖様と、地上最凶な家庭教師様3人を止めるまで、ツナの試練は終わらないようだ。









<...fine?>



あきゅろす。
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