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猛禽類を連想させるその瞳をいつも以上に鋭く凄ませ、少年は不快そうに自分よりも目線の高い男を見上げながら尋ねた。
「ねえ、沢田綱吉」
「・・・・・はい」
「誰この男」
「・・・・・・・・・・」
(十年後の貴方です)
・・・と、本当のことを叫べたらどんなに楽だろう。
がっちりと掴まれた腕の為逃げることも出来ずに少年はしくしくと泣いた。
【 ダブルトラブル! 】
「説明してよ」
俺が説明して欲しい位です雲雀さん。
本当に何でこんなことになったのかわからないツナは弱りきって眉尻を下げた。
「ねえ、此処並盛?」
苛々とツナの答えを待っている少年と酷く似通っているが、幾分低くなり落ち着きが加わった声響き、ツナは一瞬ドキッとする。
十年後の雲雀さんて声まで格好いいらしい。
「え、あ、はい」
この問いには答えられたので素直に頷くと、先にツナに質問した少年は眼を吊り上げた。
ツナが頬を染めたことも火に油が注がれる一因となったようだ。
「このいけ好かない男のことには答えるけど僕の質問には答えられないっていうの?」
「ひぃぃぃッ!!
そういうわけじゃッ!」
鈍く黒光りする雲雀のトンファーを向けられツナは恐怖で仰け反る。
「じゃあ如何いう訳?」
言うまで逃がさないよという口にしなくてもわかる眼にツナの血の気は下がる一方だ。
そのいけ好かないって思ってるのは貴方自身ですから!
それにこの状況を如何説明したらわかって貰えるっていうんですか!?
誰か助けてーーーーーーー!!
ツナの心の叫びは思わぬ人に拾われる。
「ねえ、そんなにこの子虐めないでよ」
面白げに様子を見ていた男が仲裁に入るようにする。
「・・・・何、君関係ないでしょ?」
「関係あるよ。
君が腹が立っているのは僕だろう?」
少年の不機嫌の根源である男は少年に親しみの篭った温かい目を向ける。
「・・・・そうだよ、だったら咬み殺してもいいってことだよね」
其れが気に喰わないのか少年は臨戦態勢入る。
「出来るなら、やってみてよ」
男は楽しそうに笑った。
「・・・・・えーっと」
途中から忘れられたように放って置かれたツナはどうしようかと目の前で繰り広げられる激闘を目で追う。
二人とも凄いのはわかるが、やはり十年後の雲雀の方が強いようだ。
全て受け流すようにしている。
それがわかるのか少年はムキになって突っ込んでいく。
男はそれを楽しげに受け止める。
その眼は何処までも優しい。
まるで弟に向けられるかのような其れに、ツナは何となく和む。
こうしてみると兄弟がじゃれ合ってるようだ。
ツナがクスリと笑うと同時に、家の一つの壁が吹き飛んだ。
(・・・・・・まあ、じゃれ合ってる内容はそんな可愛いとか言えるもんじゃないけど)
追ってるつもりでも度々見失うし、早すぎて眼が痛くなってきたので二人を見るのは止め、
変わりに足元に無邪気な顔で寝むりこんでいる幼子を見下ろす。
(もうー、お前の所為なんだからなランボ)
嘆息しながら更にその子の横に転がっているものを見やる。
見た目よりは幾らか軽い、使いようによってはとんでもなく物騒な代物。
十年バズーカ。
その力を知れば、恐らく世界中のあらゆる欲望を持った者たちが群がるだろう。
それはこの小さな幼児が何気なくいつも頭に載せているものだった。
いつものように誤射されたそれが行き着いた先は、よりによって並盛最強最悪と謳われ恐れられている人物だった。
でもまぁ充満する煙の中から一回りも二回りも大きくなった人影が現れたまではまだ良かったのだ。
だが影はそれだけではなく、もう一つあった。
十年後の雲雀が現れたのに現代の雲雀が未来に行かなかった理由はわからない。
だが、少し驚いた雲雀の顔が、直ぐ横にいた長身の男を視界に入れた途端変化したのを見て、最悪な状況だということはわかった。
だが取り合えず自分への注意は薄れたようだ。
(5分もすれば戻るだろうし、)
「じゃー・・・、後はごゆっくりとー・・・」
ツナは小声で呟き、眠り込んだランボを抱え帰ろうと背を向ける。
が、
「「何処行こうとしてるの」」
「!!!!!」
途端ずっしりとした重みが両肩にかかる。
「「まさか帰ろうなんて思ってないよね?」」
同じ顔で異口同音に呟かれ、振り向かなくてもわかる笑顔の二人に、ツナは聞くものが思わず同情するような悲鳴をあげた。
<...fine>
雲雀さんおめでとう!!
2008/05/05
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