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「へえ、そう」
死んだの、君。
横たえられた安らかな顔を見て、違うとわかった。
【 虚無 】
最近、ボンヤリとすることが多くなった。
元々空を眺めて色が移り行く様を見るのは好きだったけど、
最近は見上げているだけで見ていない。
眼がそちらを向いているだけで、心は別にあった。
浮ぶのは彼のこと。
何故か見慣れた今の姿ではなく、遠く昔の、彼に出会ったばかりの姿だった。
棺の中で眠っていた彼には及びも付かないほど脆弱な存在。
壊れたフィルムのように繰り返し浮んでは消える。
『哀しいですか』
何故か気遣うように見てきた瞳が煩わしかった。
哀しくはないから。
それは強がりでも何でもなくて。
自分は彼等のように烈火に激怒することもしないし、呆然と涙に暮れることもない。
彼が全てではないから。
自分は何かに囚われることはない。
赤ん坊が面白そうに言っていたから、きっとそうなんだろう。
ぞくぞくとする面白さを味わうのは好きだ。
それをくれるのは赤ん坊の他では彼だけだから。
だから死なれるのはつまらないことで。
時々興味が沸いた時は付き合ってあげたこともあった。
貸しを作るのは悪くないからね。
それを勘違いしたのか知らないが、
彼を好きなのかと聞かれ、首を傾げた。
意味がわからなかった。
好きだとか、嫌いだとか。
そういう感情は、彼には無いのに。
あるのは虚無だけだ。
少し前のそれと、今とでは違うけれど。
哀しくはない。
でも、
空っぽだった。
何かが足りない。
つまらない。
(……つまらない?)
何故?
ちょっと考えてから気付いたことに、目を瞬く。
「…ワオ、僕は意外と彼が好きだったのかな」
そう思う位には彼が必要だったらしい。
『お前は如何する、雲雀』
『群れる趣味は無いよ』
だからあの話を聞いた時も、戻るより彼を待つ方を選んだ。
僕は愚かではないし、
戻るかどうかわからない過去を待つよりも、これからが楽しみな未来を迎える方が、面白い。
「じゃあ、そろそろ。行こうか」
肩に止まった小動物を一撫でし、立ち上がった。
棺に眠った偽りは もう見飽きた
「僕は君の戯言に付き合うつもりはないからね」
待ってなよ、沢田綱吉。
君は必ず僕が叩き起こすから。
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