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基本ツナは怠惰で面倒臭がりだ。
面倒なことには係わりあいたくないし首を突っ込むことなどしない。

だがこういうことを見過ごすことも出来ない性質だった。







(・・・・うわー何でこういうことしてるかなぁ)

数メートル先にていかにも軽そうな男達数人に女の子が絡まれている。
道路を挟んだの反対側という遠すぎることはないが、近くもない位置からそれを見つけてしまったツナはげんなりした。
このままいってしまえという心の声と、誰もが見て見ぬフリをして歩きさっているのに眉を顰める自分もいるわけで。



「・・・・俺も変わったよなあ」
一つ溜息をついてから早足で点滅が終わりかけている横断歩道を駆けた。




よくも悪くも二年前に出会った、人生を大きく変えて下さった家庭教師様のお陰だと呟いて。






























【 貴方の傍にいられるなら 】































たった今動いた訳ではなく走ってきた為にかいた汗を拭って振り向いたツナは、ギョッとした。

「クローム!?」
「・・・ボス」


まさか絡まれている少女がクロームだと思っていなかったツナはその場にしゃがみ込み、頭をわしわしと掻いた。
「うっわー・・・、クロームだってわかってたらあいつ等一回位殴っといたのに」

一人を当身で気絶させ、後は脅すだけで逃がしてしまったチンピラ達を今更ながら失敗だったかなと思う。
頭を抱えた情けない状態のまま顔を上げて尋ねる。
「怪我とかない?」

こくんと頷く少女にほっとする。
まあクロームが無事ならいいかと思ったツナの眼に、些か腫れた頬が映った。
(あいつら・・・ッ!)

一瞬で何をされたか理解したツナは眦を吊り上げる。
遠目では女の子が絡まれてることしか分からなかったから余計だった。

まさか、こんな少女に手を上げるなんて・・・・!



一気に怒りが浸透して立ち上がろうとったツナの手を、クロームが慌てて取る。
「待ってボス、私は平気」
「でも!」
「ボスが傍にいてくれる方が、嬉しい」
「・・・・・・・」

おずおずと言ってからジッと見上げてきた少女に、上昇していた血圧が少しずつ下がる。
「・・・・・・・クロームがそう、言うなら」




痛かったのも、一番怖かったのもクロームだ。
これ以上さっきの奴らを思い出させるのは嫌だった。

話題を変えようとしてからふと気付く。

「クローム、髪伸ばしてるの?」
「え、」
「いや少し伸びたなと思って」
ちょいちょいと示され、クロームは少しばかり伸びた自分の髪を見やり、少し赤くなる。

「・・・・・・・・・願掛け」
「あぁ」
女の子ってそういうの好きだよねと頷きながら、ツナは微笑んだ。
久しぶりに会ったので、余計に新鮮だった。

「似合ってる」
「・・・・・・・・ありがと」













ツナは知らない。

それが誰が言い始めたか、ツナがロングの女の子が好きだという噂を聞いたからだということを。



でもクロームは知らなくていいと思っていた。

これはツナに好いて貰う為でなく一種の決意の表れだから。







自分に出来ることは少しだけど、この人が笑ってくれるなら自分は力を尽くそう。
そう思い始めたのを随分昔に感じる。


『人を傷付けちゃ駄目だ!』


いつだったかそう言って守護者の一人を止めた時の悲痛な表情。
その時から、クロームは三叉を使っていない。

そこまで大きな戦いがないからというのもあるが、ツナが望まないことを自分はしたくない。














「ボスは、私が守るね」

ポツリと呟いた少女に、ツナは気付かない。





代わりに振り返り笑いかける。



クロームの好きな笑顔で。





「あっちにね、美味しいクレープ屋さんがあるんだ。 クローム甘いものとか好き?」

ついでにそこで休もうというツナに、少女は薄っすらと微笑んで頷いた。
































「終わりましたか?」

やけに冷静な声に、柿本千種は内心首を傾げた。
てっきり幻覚とはいえ実体化するくらいなのだから、クロームに手を出した輩に相当腹を立てているのだと思っていたが。

そういう自分もそれ相応以上だったことは隅に置いておいて骸の問いに頷く。

「はい。伸して服を全て剥いだ後ドブ川に突っ込ませた後警察前に置いてきました」
「序に頭は毟っておいたビョン」

それでも足りなかった気がしないでもないが、あまり目立ったことはできないのでその程度に抑えたという二人に、骸はクフフと独特の笑い声をあげ眼を細める。
「おやおや優しいですねぇ二人共」
「は、」

「ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てなければ駄目じゃないですか」

にっこりと笑った骸に、冷静だったのは見かけだけだったのかと千種と犬は納得し、地獄を味わされるんだろうチンピラ達に自業自得だなと呟いた。










<fine>


































クロームの誕生日祝いに書いたものにちょこっと加筆してみましたv

時間軸的にはツナたん達が中三位になった時でしょうか。
クロームが髪を伸ばし始めたのはツナたんがきっかけだったらいーなー。
ムックは言わずもがな(笑)

ムックはツナたん大好きですが、ある意味それ以上にクロームを大切にしてくれてるといいv


2009.2.26


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