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「では、改めましておめでとうございます」
「・・・・・何でだ」
「何がですか?」

ほーら、僕自から淹れてあげますねーと、コポコポとヤカンからポットにお湯を注ぎながらにこやかに振り返った骸に、ふるふると体を震わせながら耐えていた獄寺はその骸の笑顔に限界が来たのか、とうとう立ち上がって怒鳴った。





「なんっで十代目じゃなくてテメーが来てんだ!!」





「何のことだか、とんとわかりませんね。
ハイ、僕特性ドクダミ茶ですよ〜」
何処から調達してきたのかわからないドロドロしたヘドロ状のものを陶磁器のカップに遠慮なく流しいれた骸は笑顔でそれを差し出した。
自分のカップには綺麗な紅い色をしたダージリンを注いだ骸に獄寺の顔に青筋がくっきりと浮かび上がる。

「俺は確かに此処で貸切の予約を取ったんだぞ!
何でお前が来んだよ!?」

ダンッと思いっきりテーブルを殴り付けた為カップが揺らぎ、何故かコポコポと煮えていたゲル状のものが純白のテーブルクロスに零れる。
それに些か眉を顰め、勿体ないと呟いた骸は登場した時と同じ台詞を言った。











「ですから僕は今日はボンゴレの代理でやって来たんですよ」










クフーとご機嫌に笑って紅茶を優雅に口にする骸に、獄寺は歯を食いしばり目の前の憎たらしい顔を睨みつけた。


































【 とんでもない贈り物 】


































其処は地上から遠く離れた最上階の高級レストラン。
一般人ではとても足を踏み入れることさえ憚るところを貸切り、その日はある一人の少年だけを迎え入れる為だけに用意した空間だった。




―― 9/9




今日はレストランを予約した少年の誕生日。
勿論、自分の生まれた日にそんなものを一人で予約するなんて寒いことをする趣味は少年にはなかった。

これは自分ではなく、一緒に食事をしてくれる大切な人の為にしただけのことだった。







1週間前。
帰り際に、急に言われたのだ。



『獄寺君って、来週誕生日だよね?』
『え?』
『何か欲しい物か、やって欲しいこととか。ある?』
俺じゃあげられるものもしてあげられることも少ないけどと、少し情けなそうに笑いながら言ってくれた人に。

自分でも忘れていたことに、理解が一瞬遅れていた獄寺は、次に襲ってきた喜びの嵐でぼうっとなった思考の中。
思わず言ってしまった。




『・・・十代目の時間を。
1時間だけ、いただけませんか?』
『え?』




その人は思ってもいなかったんだろう言葉に戸惑った顔をしていたけども、慌てて食事を一緒にして欲しいんですと言い直した自分に、嬉しそうに勿論と頷いてくれた。







だから、本来ならばどうでもいい、普段と変わらないで過ぎていく筈だったその日を。
指折り数えて楽しみにしていた。

いつもなら、絶対にもう行く気などなかったこういう店に事前に予約したり、邪魔者が来ないように事前に色々と謀っておいた。
(姉貴とリボーンさんには温泉旅行、野球馬鹿には野球のチケット、餓鬼共には遊園地、馬鹿女達にはスイーツパラダイスのタダ券。。。)

「煩わしい他の客も給仕も追い払ったし、」

ぐっと拳を握る。

完璧だ。

これで、何にも邪魔されることなく幸せな時を過ごせる。





後はあの人を待つだけだった。
ドキドキと胸が鳴るのも心地よくカンジながら待ち、最後にあの人の笑顔が揃えば・・・。


「!」


そこで微かな音がして、真鍮のドアノブが回されたことがわかり、思わず立ち上がる。
音も無くゆっくりと開いた扉に、約束の二時間も前から待っていた獄寺はパッと顔を輝かせて出迎えようとした。





・・・・・が、









「おや、随分と早く来ていたのですね」










その声と、









「クフフ、ボンゴレの代理で来た六道骸といいます。
今日は君の立派なエスコートを期待してますよ?」









楽しくてしかたがないという笑いを浮べて現れた、待ち焦がれた人とは似ても似つかないその姿に、

















「なんッでだーーーーーーーーーー!?」
















何故かやってきた霧の守護者に、絶叫した。












Continua a prossima volta...


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