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「・・・・・・・・・・・・・山本の誕生日プレゼント、っすか?」

心底嫌そうな顔をする獄寺に、やはり人選を誤ったかなとツナは早くもやっぱりなんでもないゴメンねと回れ右をしたくなった。

でも他に頼れるような友人もいないので。

「うん。
獄寺君センスいい(らしい)から買い物付き合って欲しくて」
「!!!じゅじゅじゅ十代目とすか!?」
「うん」
「そ、その二人でですか!?」
「・・・う、うん」
「お供させて下さい!是非!!」

じゃあ明日の十一時にと約束してその日は別れた。






































【 どうにもならないこの気持ち 】







































「ツナ?」
「え、山本!?」

約束の場所に行く前にばったりと会ってしまった友人に、ツナは仰天する。
休日のこの人混みの中でまさか会うなんて思ってなかった。

「偶然なのな!
今からどっか行くのか?」
「え、あ、うん。
ちょっと、スポーツ用品店に買い物に・・・」

しどろもどろになる。
まさかプレゼントを買いに来たんだよだなんて当人に言えるわけがない。
嘘を吐く自信がないのでこれ以上突っ込まないでくれと願ったのも虚しく山本は嬉しそうに言う。
「あ、オレも行きてーな。
丁度テーピングとか切らしてて、」
「そ、それは駄目!」
思わず大きな声で言ってしまう。
(あ、強く言いすぎ俺!)
でも言ってから後悔しても遅い。

驚いた顔をした後、山本は少し戸惑ったようにする。
「えっと・・・ そっか。わかった」
見慣れない少し憂いの含んだそれに、ツナは自分が相手を傷付けたことに気付く。
プレゼントのことがバレたくなくても、悪気が無くても。
あんなに強く拒否されれば誰だってショックだ。
「あのね、山本と行くのがイヤとかじゃなくてね、」

「十代目!!」

慌てて弁解しようとした所でかかった声に、ツナはげっと声を洩らす。
なんて最悪なタイミングで・・・!

息を切らして嬉しそうに獄寺がやってくる。

「すいません、こんなにお早く着かれてるとは思ってなくて、お待たせしましたか!?」
いつもに増して気合が入っているとわかる格好だった。
通り過ぎる殆どの女性が振り返っては頬を染めている。
「いやまだ時間じゃないしっていうか、ゴメン今ちょっと山本に、」
もどかしそうにそれどころじゃないんだと獄寺との話を切る前に、
山本が口を開いた。






「へー・・・獄寺と、約束してたのな」





そっかという声に、何故か焦る。
ばっと見上げると山本は暗く濁った瞳で嗤っていた。



「・・・邪魔して悪かったな」
「山本!」



背を向けて足早に人混みに紛れていってしまった友人を、咄嗟に追いかけようとする。
「十代目!?」

しかし掴まれた力強い手に引き止められる。
「離してよ獄寺君!俺山本に謝らなくちゃいけないんだ!」
「お、落ち着いて下さい十代目!赤ですって!」

戸惑ったようにツナを捕らえながら獄寺は必死に信号を指差す。
「あ・・・、そだったんだ。
ゴメン獄寺君」

少し力が抜けたツナを獄寺が離した時には、追おうとしていた少年の影は消えていた。




















































「昨日はほんとーにゴメン!」
「・・・・・・・・・」

次の日、教室の扉の前で待っていたツナに閉口一番に謝られ、山本は黙って見下ろした。
いつもと違い、何処か冷めた瞳で。

「・・・何で謝るんだ?
ツナは何も悪いことしてねーだろ」
「だって、オレ山本傷つけるようなこと言ったし、」
「俺が傷つく?
はは・・・。よく、意味わかんねーんだけど」

らしくない歪んだ笑いを浮かべる山本にツナは哀しくなる。

「あのね昨日の買い物は、山本には知られたくなくて、」
「獄寺との買い物だもんな」
「そうじゃなくて!
その買い物っていうのはね!山本の、」
「悪ぃ、ツナ。
今あんま聞きたくねーから。…勘弁」
「やま、も」

会話を打ち切りツナを避けて横を通り、山本は教室に入っていってしまった。
ツナは彷徨った言葉を伝えられないまま、また口を閉ざした。















・・・・これは喧嘩なのだろうか。


自分にはよくわからない。

今まで友達と呼べるような存在なんていなかったから。
喧嘩と言うよりも意味もなくからかわれていたという言葉の方が当て嵌まっていたし。

仲直りの仕方なんてわからない。
謝れば済む訳ではないから。

リボーンに相談しても、そんなんで山本が怒るかと信じてもらえなかった。




でもそんなことわからないじゃないか。




人によって傷つくことは違う。
ある人にとっては何でもないことでも、ある人にとっては人生がひっくりかえるような事件が沢山あるのだから。


















「山本を喜ばせたかっただけなのにな・・・」




































「・・・・・・・・」
しょげたツナがとぼとぼと教室に入るのを声を掛けられずに少し離れた位置でおろおろと見ていた少年は、自分の不甲斐無さを憎むように手を握り締め、ギリッと奥歯を噛み締めた。


「あの、野球馬鹿が・・・!」












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