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「クフフフフ・・・
貴方も沢田綱吉が気になりますか」





























最近出没し始めていた侵入者が言った言葉の意味がわからなかった。













「そんなの知らないよ。
並盛の風紀を乱す者は咬み殺すだけ」




だから早く消えてよとまたトンファーを打ち下ろした。






































【 それは泡沫 1 】












































「聞いたか?
あの駄目ツナがさー」


その単語に足を止める。
最近よく耳につくそれに、浮かび上がる顔。


・・・苛々する。





「うわっ、マジで?
ほんっとアイツ駄目駄目じゃん。
ちょっと脅してたらすぐ金出しそうだよなー。
今度裏にでも呼び出してみ、」



「ねえ・・・、今授業中だよね」



「あー?
ってう、わ!雲雀恭弥っ!! 、さん・・・っ」



頭の悪そうな反応に冷笑する。



「僕の前で堂々とサボリながら悪巧み?」

「ま、まさかそん、」

「まあどうでもいいけど」














生ゴミは近くの委員に任せ、上へ向かった。






































屋上に出ると、ほかほかとした陽気と共に、運動に励む生徒の声が聞こえた。

聞きなれた穏やかなものにほっと息を吐いて校庭を見下ろす。









ツナ! いったぞ!









「・・・・・・・ッ」






また聞こえた名前に、
見つけてしまった姿に。

・・・遠目からでもわかってしまった己に眉が寄る。




収まりかけていた不快なものがまた首を擡げる。

















「気にならないんじゃなかったんですか」

















「煩い」

また湧いてきた侵入者に振り返りはせずトンファーを振り上げる。
いつもと同じようにそれは当たらず空を切る。

舌打ちしてから睨みつける。

「・・・この間から君、何なの」

「別に貴方には興味はありませんが、
彼をそんな眼で見られているのが大変気に食わないのでつい」


彼は僕のものですから。


はっきりと告げる男が気に食わない。
こんなにもこの名前に引っ掛かる自分がわからない。




だからまた苛々する。













「僕のものです。
あの柔らかな髪も、つぶらな瞳も、華奢な身体も全て・・・」

独り言のように、骸は呟く。
彼をその手にするのが待ち遠しくて堪らない癖に、その切なさを楽しんでいるかのように恍惚として。

「勿論あの柔らかく愛らしい唇も、ね」

まるでそれを味わったことがあるかのように己の唇をぺろりと舐める骸の言葉に、雲雀の目の前が赤く染まっていく。




「いい加減君、死んだらどうなの」

「おやおや、怖いですね」



雲雀の攻撃を軽く踊るように避けながら骸はふわりと柵に立つ。
今の彼には重力などないも同じだ。
やろうと思えば飛翔さえしてみせるだろう。

爪先でバランスを取るようにしながら骸は笑う。


「そんなに彼を見られるのが嫌ですか」

「当然でしょ、アレは僕のものなんだから」

自然、口から転がり出た自分の言葉に、眼が驚愕に見開かれる。

( ・・・・ 今何て )



















今、僕は何と言った














自分に問いかけても応答が無い











恥ずかしい

恥ずかしい

恥ずかしくて堪らない









その感情が雲雀を支配する




今まで生きてきた中で味わったことなどない代物






雲雀の顔は一気に熱くなった。






「可愛らしいですね、今更自覚なさったんですか」





くすくすと笑う骸に、恥羞心のあまり、雲雀は滅茶苦茶に身体を動かす。




まるでなっていない動き。

これでは直ぐに隙を突かれるだろう。








違う、

こんなのは僕じゃない。



違う。


僕があの草食動物に執着を持ってるとかそんな訳が。












「あるわけ、ない・・・っ!」












散々翻弄されるように動き回り、姿はあるのに切り裂くことができない相手に吼える。
こんなのは自分ではない。
断じて認めない。

一番見られたくない、咬み殺すべき獲物にこんな醜態を晒すなど。

薄い唇を噛み締める。
慣れた味が口内に広がる。


































「・・・・・僕は、貴方が羨ましい」






































「・・・・・・・・・・」




骸が消えた箇所を見つめ、雲雀は一人そこに立っていた。


どういう意味なのかわからない。

何が言いたかったのかさえわからない。










自分が何故あの名前に反応してしまうのか、

気付けば目で追ってしまうのかなんて全然わからない。




















・・・・・わかりたくなど、なかった。





































「・・・・・・・僕は、ただ咬み殺すだけだ」






































一人の風紀委員長が去った後、そこには誰もいなくなった。





































Continua a prossima volta...


あきゅろす。
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