前触れもなく始まったそれは拷問


「なに、笑ってるの」
「え・・・、」



平気ですと言ってへらと笑った顔に無情に腹が立った。



「君、感情あるの。そういうことされて、嬉しいの」
「・・・・・・・・・・嬉しいわけ、ないじゃないですか。
でも仕方がないって思うから、だから、」




・・・・・・仕方ない?


















その一言で、確かに雲雀は自分の中の何かが千切れた音を聞いた。

































【 前触れもなく始まったそれは拷問 】


































「――よく、僕の眼の前で。
しかも君の口で、言えたものだよね・・・」



押さえられていたものが一気に噴出したような。
そのあまりの静かなる激情に、震え上がった綱吉は己が失言したことに気付いた。
だが今更後悔したって仕方がないだろう。
恐怖で竦み、体を動かすことさえ諦めそうだった。

眼を逸らしたいのに逸らせない。
まるで呪縛のように絡み付いて離れない、捕食者の瞳孔。




「なんで、そんな、」




貴方が怒っているんですか?





そう問いたいのに舌が縺れて。









「何故?」








すいと眼を細めた獰猛な肉食獣は、その鼻面を獲物へと近づける。
小刻みに震えているのがわかる小動物は、金縛りにでもあったように動かない。
それをいいことに、獣は吐息を吹き込むようにして耳元へ囁いた。




「僕のものだからだよ」
「・・・え」








赦さない。








「僕のものに手を出して、ソレがのうのうと生きているなんて。
おかしいでしょう?」









沢田綱吉は、僕のものなのに。










「触れていいのも、傷付けていいのも・・・・、僕だけだ」
「・・・・・・・・・・・いッ」







ず、と頬の傷を指でなぞられ、鋭い痛みが襲う。
だが綱吉が痛みを告げる前にそれは簡単に阻まれた。
「ッふ、んッ・・・ッ!!」





長く、執拗な。
彼にとってはいたぶりに近い行為に、綱吉は相手の胸を叩く。

否、叩くなんて生易しいものではない。
必死に殴りつけていた。

それに仕方ないとばかりに少しだけ隙間が空けられ、息を赦される。
「んぁ、はッ、ふ、んん・・・ッ」



しかし必死に空気を貪ろうとして聞こえた自分のものとは思えない声に赤くなり、目尻に涙が滲む。
それが生理的なものなのか、自分の現状に対するものなのか。

わからずにそれは零れた。













初めては、噛み付くような、根こそぎ奪うような。
そんな口付け。



それが拷問でないと誰が言えるだろう。































「・・・・・・・続きはまた帰って来てからね」







気絶してしまった綱吉にポツと告げ、雲雀は迷わず足を外に向ける。
さぁ、狩りの時間だと。ざわと闇が呼応するように蠢いた。







































拷問でないと言えるのは、雲雀恭弥ただ1人。














あきゅろす。
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