Paroletta

その時

ああ、この人はマフィアだって そうわかった


































 



【 Paroletta 】















































頬が、熱い。











こんなこと、慣れている筈なのに 手が、震える。

震えが止まらない。













熱が零れるように服に滴ったものが何だかは、見なくてもわかった。
でもそんなものはどうでもよくて。



あの人が、いつもと変わらずにいたということの方が。

痛くて、苦しくて。





(頭では理解してたつもり、だったんだけどなー・・・)





笑顔で指を引いたあの人の笑顔が眼に焼きついて離れない。
心が悲鳴を上げている。






「ツナ!」






軋む







「ゴメン、ゴメンな!」








崩れる








「ああ、血が・・・!
ロマーリオ!直ぐに血止めを!」








今まで見ていたものが、幻想だったのだと。
思い知らされる。











「痛いよな?怖かったよな?ごめん、ごめんツナ・・・!」










やめて、言わないで










「でも、それでも俺は、」










お願いだから、それ以上









「お前を愛してる、愛してるんだツナ・・・ッ!」

































俺の中の貴方を 壊さないで


































眼が覚め、直ぐに視界に入って来た、憔悴しきった顔に。
そっと、微笑みかける。

それに動揺したような様子を見せるが、その人はぎこちなく笑った後、顔を伏せた。
「俺は、ファミリーを棄てられない」
「…わかってます」



それは出会った時から予感していたこと。



「いざとなったら、お前よりも、ファミリーを取る」
「…………はい」


・・・・それも、嫌という程思い知らされた。


「それでも?」


































『それでも、オメーはアイツを選ぶのか?』








うん、ゴメンねリボーン。

この人は、俺がいなくちゃ駄目って言うんだ。



そうじゃなくちゃ、俺の大切なモノ。

全部コワしちゃうかもしれないって、云うんだ。




だから、仕方ない。

仕方ないだろう?












『・・・・・・・・ッこの、駄目ツナが!』













ハハ、懐かしいなーそれ。

久しぶりじゃない?





うん、うん。それどころじゃないよね。

そうだよね。





でもね、俺は欲張りだから。

欲しいと思ったものは全部欲しいし、自分のモノは何一つ失いたくない。





だから、俺は行くよ。









有難う、さようなら。

冷たくて優しい俺のヒットマン。

お前だけを愛していたよ。







こうすることでしか、守れない駄目な俺を偲んで、泣いて・・・。







最後には笑ってね。

















これはドン・ボンゴレからじゃなくて、俺からの最後の我が儘。

独り言。
































陽炎のようにチラついた面影をそこでふつりと断ち切る。
自分にはもう必要のないもの。

いるのは甘い言葉だけ。




沈黙を何ととったのかいつのまにかジッと此方を見下ろしていた人に気付き苦笑する。



―嗚呼、なんて愛しい程愚かで、可哀想な人なんだろう



不安と期待の入り混じった狂気の瞳に、安心させるように、望むように笑いかける。

「はい、俺は貴方と共に行きます」
「・・・・・・馬鹿だな。お前も大概」


搾り出すように呟き、全てわかっていながらも泣きそうな顔をして俺を抱きしめたその人を。

俺は抱き返しもせずにぼんやりと外を見つめた。

















確かにこの時世界は壊れたのに、一つの音もたてやしない。


世界が壊れても、空は青いまま。

少しも何も変わらない。

そんなちっぽけな存在、ドン・ボンゴレ。


可哀想にという全てが嘲笑い祝福を送る。
















壊れずにいた、ただ一人の存在はその場に姿も見せなかった。



















「それで救われるなら・・・」
「ん・・・、どうしたツナ?」




隣で目覚めたらしい人に、愛すると誓った人に返す。




「いいえ、何も」
「・・・ツナ、」
「はい?」
「愛してる、お前だけをずっと、愛してるんだ」
「はい、わかってますよ」




クスクスと笑って返すと、その人は不安を掻き消す為か、また俺の首元に顔を埋め始める。
伝わらない熱を吐き出すように、愛してるんだと呟きながら。





























『アイシテル』




それだけで守れるなら幾らだって言葉を紡ぐ。

甘くて胸焼けで涙が出そうな睦言。

どんなに口にしたって俺は平気だから。























俺は、その時

確かに

その人と同じ世界に足を踏み入れた

































― なあツナ、後悔。してるか…?






その人は今でも時々不安そうな顔をして振り返る

だから俺は何時だって安心させるように笑うのだ







― いいえ?
俺は今 貴方と同じ世界にいることができて 幸せです





























甘き睦言の調べは絶え間なく いつまで経っても 終わらない







<fine>


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