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企画
「すきやで」



俺はよくヘタレと言われる。
確かに自分自身ヘタレだと思う。
死にたないし、傷を負うのだって嫌や。

普通はみんなそうなんじゃないのか?と
不思議に思いながらも、俺はヘタレという称号を持ち続けてた。

「謙也様、どうされたのです?」


「別に…何もあらへんよ」


不意にソプラノの澄んだ声が聞こえた。
俺はその声に反応を示した。

「嘘ばっかり…そうやって視線をそらすのは何かあった証拠でしょう?」

「やっぱりお前には適わんな…。つか敬語止め。キモイっちゅー話や。」


はぁ、と溜め息混じりに障子を開けて外を見る。そんな俺を見て彼女は首を傾げた。

「どないしたん?謙也。言うてみな分からんで?」

敬語を止めて俺の顔を覗き込んで、
心配そうに言葉を紡ぐ彼女。こいつは俺の幼なじみや。小さい頃良く一緒に遊んだ。
今は俺が武将になってお偉いさんになってからそれは良い思い出にしか過ぎん。
まぁそんな話はどうでもええとして。

俺はコイツに何て言おうか戸惑った。
どうせ俺はヘタレなんや。
こういう時でさえ、素直になれない。
言ったらキモイと思われるんじゃないかと。

「…」

「謙也、言うてみ?」

悩んだ末に俺は言うことにした。
嫌われてもいいから、この悩みを。


「…俺…な、」

「うん?」

「…ホンマは…戦いたくないんや…」

「…うん。」

「…ヘタレやから…自分が傷負うのも嫌やし…自分の手で人を傷付けるのも嫌や…。」

「…うん。」

「…死にたく…ない…ねん」

思いの丈を全て打ち明けた。なんだかんだで真剣に聞いてくれて、俺はほっとした。打ち明けて良かった、と。
そう思っていると彼女は口を開いた。


「…謙也はヘタレやない。それはな…優しさ、や。」

「!」

「そりゃ、他の人から見たらヘタレに見えるかもしれない。」

「う゛っ、そ、それは…」

「でもな、死にたないのはみんな一緒や。この地球上に生まれた人間や。みんな、死にたないはずや。けど、人を傷付けたくないのは、謙也の“優しさ”や。違うか?」

「…」

「謙也はな、優しすぎんねん。
でもな…、悲しい事にそんなのは今の時代通用しない。」

俺は正直驚きを隠せなかった。
コイツが言っていることは、俺が答えを求めていたものばっかりだから。
自分で考えたことと一緒の部分があったりしたけど、コイツが言った方が説得力があった。

「ちゃう…俺は…優しくなんか、ないねん。」

「謙也は…大切な者はおる?」

急な質問に俺は首を傾げた。
そんなもん居るに決まってる。
そう思い俺はゆっくりと頷いた。


「謙也が負けたらな、その大切な者もいなくなるんや。」

「!!」

「だから、自分の為に戦わないで
大切な人を守るために戦って。
…そしたらな、人はいくらでも強くなれるんやで」


俺は自分があまりにもバカで子供だということを気づかされた。こんな大事なこと
俺はいつから忘れてしまったんだろうか。

「そう、やな…おおきにな!!」



すっかり元気づけられてしまった俺は
上機嫌になり彼女にそっと耳打ちした。










「好きやで」

(お前のそう言う所)

(感謝しきれへんぐらいにな)






企画:花の下にて。様に提出。




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