[携帯モード] [URL送信]

sss
『三つ指ついて』

「人間ある程度の年齢になるとやっぱり落ち着きが出るもんだ。学生の頃脱色染色を繰り返した頭髪が今では天然の黒色がお決まりで、ガキくさく伸ばしていた前髪ともみあげも短くスッキリとしたもんだ。夜遊びは気力と体力の問題でとっくに引退だ。昔かっこつけの為に吸い始めたタバコが家計と健康を侵害するだけでしかないと気付いたのは最近になってからだが。精神的にも安定してきて、自分の人生如何と悩むこと無く、我思う故に我ありと、ただ自分の存在の為生きるのが当たり前になってきてる。同じ時間に起床して、職場行って、そこそこ納得出来る仕事して、帰って、美味いもん食って、本読んで、酒飲んで寝て。とても人間的で結構楽しい毎日だと我ながら満足してる。ただ生物としての責務である繁殖に関しては、大いなる神々の期待に応える日は無いだろう。同性にしかムスコが反応しないから仕方ない。そんな性癖の上、俺は童貞であり後ろの経験も無いんだ。一般のヘテロでも生涯童貞を危ぶむ奴らが大勢蔓延っている現代じゃ、俺みたいなのも珍しくないと思うがどうだろう。同種の会合には行った事が無いし、悩みを共有する友人も居ない。いつも太陽に張り付く黒点みたいにゲイであるという事は俺の意識に染み付いていたが、その弊害はただオカズがマイノリティーに属している点くらいで、周囲に同調するように生きていたら、いつのまにか、経験値を上げる事無くオッサンと呼ばれる年齢になっていたのだ。その事は今までの生き方を振り返ると少々寂しいと言える。これから暖かい家庭を築く予定も当然無い。友人は居るので孤独では無いだろう、だが人肌恋しいと思えば、俺は間違いなく孤独だった。お前に会うまでは」
「……………そうですか〜。それじゃ、バイトあるんで!」
「……………」
「ひぇええ〜離してくださいぃい!!」
「要するに品行方正、清廉潔白、まっさらなキャンバスの俺をどうぞ頂いて下さいって話なんだが分かってもらえたか?」



終.
強引なおっさん受け(童貞処女)というジャンル。



36/38ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!