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『祝』5
※平凡×男前

二人が付き合う前の話。

加藤敦史は後輩の佐々木ヒロに恋をした。
初めての面識は昨年の事で、加藤が高校一年生、佐々木はまだ中学三年生の時だった。それもおそらく、加藤が一方的に見知っている程度。
二度目は今年の春。
昇降口の下駄箱で見た佐々木に加藤は落ちたのだった。

恋愛感情が芽生えた加藤は対象の観察を始めた。
遅かった登校時間を改めて、校門近くに潜み佐々木の登校を待つようになった。
体育授業中の佐々木を校内から眺めるようになった。
そしてただ、恋煩いのため息を吐くのである。

「おい…アレ何なんだよ…」
「好きな奴でも出来たんじゃね。うち男子校だけど」
「見てるだけって乙女かよ…」

腕っ節も強く男前であるのだが、恋愛に淡白である為に自分からどうこうと出来ない加藤である。
実際今までも、加藤が誰かに懸想してしまうなんて事は無かったし、その上相手が男という事にも友人達は共感出来ず戸惑っていた。
加藤の恋愛対象が佐々木だとは本人から明かされた訳では無いが、傍目には結構バレバレだった。

「おい加藤なんか痩せてね?」
「ちょ、飯食ってんのか?」
「うわめっちゃフラフラしてる」

加藤の恋の病はよっぽど重症で、佐々木を想うあまり食事も忘れてしまう始末である。挙句、遂には立ちくらみを起こしてしまった。
それでも這いずり、窓枠から青白い顔を出して佐々木の姿を求める加藤に、友人達は諦めを込めて嘆息した。

そして、現在は使用されておらず取り壊しを待つばかりの旧校舎の一室に、加藤の友人達は集合する。
加藤はフラフラと佐々木を探して彷徨う事が多くなっていたので、
それを撒いて集まるのはたやすかった。

「ああ見てられんわ!どうすんのアレ死ぬぞ!」
「どうでもいいから告らせようぜ。フられでもしねーと目が覚めんだろ」
「加藤てでも、どうなんそういうの」
「そういうの?」
「だってあいつ、彼女とか今まで居た?もしくは…彼氏?」
「……………」
「……………居なくね?」
「もしかして加藤ってどうt」
「尚更何とかするしか無いな。風邪と何とやらはこじらせたら終わりだぜ。特にイケメンは悲惨な事になるぞ」
「俺らみたいな耐性ないからなイケメンは」
「何耐性って」
「お前の顔面偏差値で童貞なら自他共に納得だろって話だよ」
「……………」

そうして加藤を告白させる為の作戦会議が秘密裏に開かれたのだった。



終.



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