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『祝』2
※平凡×男前


屋上、貯水タンクで出来た影に二人は腰を降ろし昼食を咀嚼している。

佐々木ヒロと加藤敦史がお付き合いを始めて五日が経った。
佐々木が一学年先輩の加藤に告白された翌日の火曜から、二人は昼休憩を共にしているのだった。
素行の至って普通な佐々木と素行不良で名の知れている加藤の組み合わせは、なかなか周囲から浮いていた。
今も、他の屋上利用者達がこそこそと二人の様子を伺っている。

佐々木は母親の作った弁当、加藤はコンビニ弁当を食べていた。
会話も特に無いので、食べながら佐々木はぼんやりと"彼氏"の横顔を見ている。
加藤は不良と呼ばれる部類なのだが、見た目は結構渋いな、と佐々木は思った。
髪はワックスで遊んでいるが、不快じゃない長さで、脱色や染色はしていない黒髪。眉毛も整え過ぎてなくてカッコイイ。
なんて思っているだけなのも勿体無かったので、佐々木は口にした。

「先輩の顔カッコイイ」
「もみあげらへんもカッコイイ」
「鼻カッコイイ」
「眉毛がイケメン」
「口がかわいい」
「首たくましい」
「指ごつくてカッコイイ」

加藤が返事をしないので、佐々木の一方的な賞賛が続く。
飽きもせずつらつらと述べていたが、二十分程経ったころ予鈴が鳴った。
佐々木は立ち上がり、加藤を振り返る。加藤は顔を伏せて座ったままだったが寝てはいないようだ。
午後はフケるのかな、と合点して、佐々木は教室に戻る事にした。

「じゃあ、また。先輩」
「……………おー」

素っ気無い返事と裏腹に、加藤の耳は赤く火照っていた。



終.




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