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『引力』

「課題のプリントは終わったか?」
「終わるかよハゲ。そんな直ぐ済ませられんなら居残りとかねえだろが」
「俺と二人きりになりたくてわざわざ素行不良にしてるんだろう?全く素直じゃ無いなお前は」
「なわけねえだろ……あんたみたいなんが教師になれるなんて世も末だ」
「言葉と裏腹にシャイな奴だ。認めて、言えば良いだろう“先生とえっちなお勉強したいの"。さあ、言え!」
「ボケが頭わいてんのか」
「お前の事を考えると脳髄から下半身にかけて沸騰してしまうよ」
「き、きめえ……」

夕暮れ時の放課後に赤く染まった教室で、教え子という立場以上に愛してしまった可愛い生徒が頭を抱えた。
度重なるブリーチで痛んだ彼の毛先は、反して沈みゆく陽光を透かして美しい。
出逢ったばかりの野良犬のような剣呑さは大分落ち着いて、叩き出す軽口に親愛の情が伺える。
彼が飛び抜け苦手な数学の教科担当である事を喜べるのは、こうして放課後に居残りと称した逢瀬を果たせられるからだ。

「終わるまでは帰せないぞ」
「学校閉まんだろ」

切れ長の一重をだるそうに逸らす少年の首もとには比較的新鮮な愛の跡。

「続きは先生の家でやれば良い」
「あんたなあ…………」

夕日が全てを赤にするこの空間で、それでも見違えることの無い彼の頬の色は期待を煽り、自信を持たせる。

「数式だけと言わず、服の脱ぎ方から体の洗い方まで教えてやる」
「変態教師が」
「仕方がない。お前は愛しい生徒だからな」

ばか、と溜め息混じりに呟き顔を向直した少年は、次いで諦めたような微笑みを浮かべた。
青年への成長を続ける太くなった指が真っ直ぐ伸びて、ワイシャツの襟に掛かる圧力。
引かれ、眼前に迫る少年の顔は笑ったまま、唇に感じた熱いぬめりに思考も

「どーせなら保険体育も頼むぜ、せんせ」

ふ っ、 とう。




終.
なんだこれ…
楽しかった…



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