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『宝箱』
※殺人物です。陰鬱。




「オラッぼけっカスッ死ねっばかっあほっばかっばかばか!腐れチンカス!!……………んあ?」
三年目ならまだしも、三日ぶりの浮気は大目に見れなかった。
俺とアホの愛の巣に残業後の帰宅。
見慣れないハイヒール。
開けっ放しになった寝室から響くオンナの喘ぎぃいいいい?!
怒り狂って目を血走らせ、踏み込んだ寝室。
夫婦のナニ用のでかいベッドに重なる彼氏と知らんオンナ。
俺の絶叫にびびったオンナは走って出てった。
「話せば分かる」
と繰り返すアホとの会話を放棄してマウントポジションを奪取。
あとは拳を繰り出し罵声を浴びせていた。
のだが、
「あれれ…………」
ピクリともしなくなってしまいました。
アホが、また死んだ振りでもしてんだろう。
罪悪感など微塵も無い。
こいつの浮気癖で散々血尿する思いを味あわされてきたんだ。
男前の原形皆無となったアホの腫れ上がる顔に唾棄。
傷口に粗塩でも塗り込んでやりてえ。
スーツを脱ぎながら浴室へ向かう。
今夜はもう遅い、カップラーメンでも食って糞して寝るつもりだ。
「まだやってんのかよ」
眠りに戻った寝室で、アホがまだ体勢を変えずに停止していた。
小突いても反応しない。
ガキか。
そんな所も好きなのだが。
怒りが勝って居たので、無視して隣で寝た。
翌朝。
寝ぼけ眼で隣を見ると、まだ静止しているアホがいた。
手当てもせずに、本当にアホだ。
傷口の血液は固まっていた。
つついて、痛みに目を覚ますかと思ったのだが、全然相手にされない。
石頭では引けを取らない俺である。
「一生やってろ」
捨て台詞と共に出勤した。
帰宅。
玄関に知らない靴は無い。
室内灯一つ点けずにアホは何をやっているのかというと、昨晩、今朝と同じ体勢をキープしていた。
バカ、だなあ。
「もういい、」
言って、肩を揺らしてみた。
踏ん張ってんのか、びくともしない。
許してやろうってのに最悪だこのアホ。
腹が立って、夕飯も食わずに居間で寝た。
次の朝。
ソファーでの睡眠で節々が痛い。
着替え、朝食、最後に寝室をノックした。
返事は無いが、玄関にアホの靴はある。
冷戦ってことか、よござんす!
「バカアホ死ね!」
いってきます、の代わりに罵詈雑言。
帰宅。
玄関にアホの靴はある。
ずっと同じ場所に。
「ただいま」
返事は無い。
俺が悪いんだろうか、でも、俺が居るのに、俺らの家に知らないオンナを呼んだこいつが悪いに決まってる。
浮気の度の口論すら今回は無い。
そうなったのは俺が悪いのか?
折れないと駄目なのか?
音の絶えた家、食欲も消えた。
スーツを脱がずにソファーで寝る。
寝室に行く気分にはなれなかった。
目を閉じても、楽しかった記憶ばかりが蘇ってしまい、結局一睡も出来なかった。
朝。
頭が揺れる。
気分が優れない。
アホの笑顔が見たい。
しごと、は、休もう。
ふらつきながら寝室を開けた。
アホのシルエットは動かない。
ごめん
と、近づいて触る。
アホの顔がぱんぱんに腫れ上がって、
異臭、
風呂も入らずに、意地張ってるからだ。ばか
話しかけても返事は貰えなかった。
隣に寝そべり、寄り添い、名前をつぶやく。
アホの隣だと、よく眠れた。
朝。
ほんの少しだが、アホが動いた。
俺が名前を呼ぶと、口元が緩むんだ。
些細過ぎて、きっとおれにしか気付けない。
すきだ
と言ってみた。
おれも
って聞こえた。
ちゃんと仲直り出来るまで、仕事は休もう。
朝。
夜。
朝。
夜。
何日も過ぎた。
何日、具体的には数えていない。
笑いかければ返されて、愛を囁けば応えてくれた。
仲直りはとうに出来ているのに、俺は仕事に行く気分にはなれなかった。
こいつと付き合って、こんなに穏やかな時間があっただろうか。
大喧嘩で負わせてしまった傷に、毎日エタノールをぶちまけた。
しみる、とアホがべそをかくので、鼻頭に唇を落とし、宥めた。
楽しい、
幸せだ、
二人でいいや。
だけどこれは

玄関で来客を知らせるチャイムが鳴る。
何度も何度も何度も、無視していたが、次第に扉がガンガンと乱打された。

「警察です、お話があります」
ですよね。



終.
アホ幽霊編で台無しにします。




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