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第二の人生


3

「失礼致します、陛下」


男がいつもの装束に着替えた頃、ノックと共に扉が開く。
返事も待たず入室してきたのは婚前におれ専属のの世話係をしてくれたソルトさんだ。
……そして、未だに、世話係は継続されている。

『魔王様の御命令だ。また暫くは私の課題をこなして頂こうか、人間殿』

との宣言通りに毎日飽きもせず文字書き取りを宿題に持ってくる。
教材は絵本………という自尊心が擦り切れるシロモノだが、こっちの文字は“タカギシュンヤ"しか分からないおれには過大な関門だった。
朝飯のような夕飯を男やゼノとささやかに食した後、鬼教官が迎えにくる。

ってのが新しい習慣でもあったのだが、起床から飯も食ってない時分にソルトさんが来るのは一体何の用なのか。
何もない場所から霧と共に登場するいつものイリュージョンも無いなんて、珍しい。
……ゼノも機嫌悪そうにシワ寄せてるしよ。

「人間殿、頭が不様ですよ」

挨拶代わりの憎まれ口にも慣れきって、おれは治まりの悪い寝癖をおざなりに撫でた。

「何だ」

口数の少ない男が、端的に外交官に訊ねる。

「国境の関に一匹、東の使者が訪れたようです」

その返答に男の眉が片方、わずかに上がる。

“東の使者"ってなあ何だ?
疑問符と共に首を傾げると、忌々しげにソルトさんがおれを見た。

「人間の国の使者だ」




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あきゅろす。
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