第二の人生
7
ただ想定外だったのは、ガキがやたら美少年だった事である。
年はぱっと見で中坊前後、だがおれの知る中学生とは一線を画すような神々しい美形だ。
白い肌に青い瞳、柔らかな金糸が目元に落とす影は美しく、華奢な輪郭は儚げだ………いつおれは詩人になった。
ともかくハリウッド子役と評すにも語弊のある気品たっぷりの美少年だ。
何なんだよ。
「我を呼んでいたのは、この唇か……」
自分の危機も忘れて、心中でガキを絶賛している間にも、ガキの行動は止まらない。
細い指先が顔に迫ってきたので我に返り、慌てて身を反らす。
「さ、さわんな……っ」
嗚呼、未明の境遇にも関わらず反抗してしまうおれのバカなお口。
ガキは意にも介さず、
「照れるでない」
負けず劣らずバカな殿様口をお持ちのようだ。
眼を覆う手をどかし、唯一の防具である白い布団に身を隠した。
蓑虫状態のおれは一層間抜けだろうが、ブスリ、とやられても即死は無いこの布の厚みは精神的な鎧になる。
「怯えずとも良い。脅威は我が払ってやる」
何言ってやがる、お前が脅威だ!!
とは飲み込んで、無意識に脳裏を焦がす“あの男"の姿へと思いを馳せた。
『俊也』
聞き慣れたはずの男の声も今や昔、と思える程のおれ的天変地異だ。
魔城での非日常がようやく日常になって、
なのにこの非日常はなんだ。
ちょっとふしぎ、のレベルじゃねーぞ。
わけがわからん、
来てくれよ、魔王さま
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