第二の人生
2
目覚めた瞬間に見てた夢忘れるなんて良くあることだが、叫んでしまう程強烈な中身となると気になる事山の如しだ。
「うー……」
しかし、頭を捻り努力してみても思い出せたのは“赤"だけで、肝心の内容は全く思い出せない。
だめか…。
スッキリしないまま潔く諦めて、のそっと立ち上がる。
まあ何だ、
一人部屋に取り残された感が寂しいが、お目付役が居ないこの機会を逃すまい。
気を取り直して部屋の扉へ足を向け、廊下にある、窓とは名ばかりの細い切れ込みを目指す。
初の太陽鑑賞でもしてみようか、
指をドアノブに掛けた。
回す、
「…………鍵かかってる」
想い虚しく扉は開かなかった。
男とゼノが居ない代わりに部屋に閉じ込められているらしい。
こうなりゃもうやる事は一つっきりだ。
ズリズリとかかとを引きずり、牛歩の速度でベッドに帰還。
ふかふかの黒い布団に潜り込み、拗ね気味にゆっくり瞼を閉じた。
「おやすみー…」
自分で自分に就寝の挨拶を呟くおれはどんだけ寂しい奴だ…。
「あら、まだおねむには早いんじゃない?」
脈絡もなく暗がりに響いた、声。
おれじゃない、魔王さまでも、ゼノでもソルトさんでも。
“卵"から生まれて初めて聞く、女の声。
「え、」
予測しない事態に全身を走る寒気がおれの喉を締める。
叫びを上げる前に硬直する体。
声のした方向、部屋の隅で黒が動くのを視界の端で確認してしまった。
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