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第二の人生


5

「私には不本意だが貴様はまがりなりにも“魔族"の王の伴侶だ。魔族と人間が相対する際派生する影響が解せん内は気軽な言動は控えて頂こうか」


会いたいなあ、

って本心は間に割入った外交官の台詞で喉奥へと収まってしまった。


耳タコな話によると、この世界じゃ人間と魔族は根っから犬猿の仲。
昔は戦争ばっかの毎日だったと聞かされている。

こちらこそ不本意で御座います!

とノシ付けてつっかえしたいところだが、右も左も前後上下チンプンなおれに飯や寝場所や、悪くない人間関係…もとい魔族関係をくれた魔王さまには返せないほど恩がある。

今は戦争もなくひたすらの膠着状態だそうだが、長い抗争の歴史をかじっただけのおれに軽率なわがままは言えないだろう。
シリアスな事情にぐてっと肩が落ちた。


「会わなくてもだいじょうぶです……」
「…………そうか」

気分の沈んだおれと反対に、何やら魔王さまは嬉しそうに微笑みながら、おれの手を握った。
されるがまま掴まれた手を放置していると、男の手悪さが始まる。
いじりいじりとおれの爪を撫ぜ、手の甲に指を擦り付けられ、
………なんかまた頭が熱いんだが。

「何だこの茶番は……」


疲弊した感たっぷりのソルトさんの呟きに、おれと男は揃って首を傾げた。


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