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小ネタ置場
虚ろなる者への届かぬ言葉。
※原作の、マイクラで廃人状態の社長とお見舞いに来た表くんの話。
※結構シリアス。














「何かありましたら、内線でお呼びください。」
「あ、はい。」
「では失礼します。」


海馬くんの部屋。
今はボクと海馬くんの二人だけ。
でも、海馬くんはボクに気付いていない。
車椅子に座ったまま、声を出すこともない。
もう一人のボクが海馬くんの心を砕いたあの日から、彼の目は何も映さなくなった。


「海馬くん……」


近づいて、そっと彼の手を取る。
何の反応も返さないことが寂しい。


「ごめんね、ボクのせいで……」


あの時、ボクがもう一人のボクに代わっていなければキミはこんなことにならなかった。


「ボクのお見舞いなんて、キミには迷惑なだけだよね……」


キミの心を砕いたのはもう一人のボク。
だけど、その原因を作ったのはボク。


ボクが弱いから、もう一人のボクがキミと戦い、そしてキミの心は砕かれた。





ボクの弱さが、キミを壊してしまった。


「……ボクも、強くなるから。」


どうすればいいのかはまだわからないけど、いつまでももう一人のボクに甘えてはいられないから。


今度こそ、キミと真正面から向き合うためにも。


「だから……戻ってきて。」


キミの帰りを待っているのはモクバくんだけじゃない。
ボクも、もう一度キミに会いたい。


今度こそ、キミとたくさんの話をしてキミのことをわかりたいんだ。





海馬くんの瞳は、相変わらず虚ろなまま。
そっと彼の頭を抱き寄せて、肩に乗せる。


普段の彼ならきっとボクを引き剥がそうするんだろうけど、そんな様子はない。

彼の頭を撫でながら呟くボクの願い。





「ボクは……本当のキミに会いたい。」





振り返って、海馬くんのお屋敷を見上げる。
今までにも何度かお見舞いに来たけど、海馬くんは何も変わらない。


「……また、来るからね。」


そうして、ボクはまたキミに届くことのない謝罪を繰り返すんだ。


END

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