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小話
☆社長の焦燥。
※海→→←表です。
両想いまで後三歩といったところの、少し微妙な距離の二人です。










珍しく一日時間が空いた。


出席日数の事もあり、久々に登校することにした。





……遊戯の顔が見られる事に少しばかり浮かれているのは、気付かなかった事にしておきたい。


いつも遊戯は、笑いながらオレに話しかけてくる。
それを喜んでいる自分がいるのは、もはや否定出来ない。


理由など気付いてしまえば簡単で、だが認めるには相応の勇気とそれなりの時間を必要とした。





……オレは遊戯を好いている。
それも、恋愛対象として。




最も、今告げた所で拒絶されるのはわかりきっているし、以後話しかけられることも無くなってしまう可能性はかなり高い。





先ずは遊戯にオレの存在を意識させるのが先決。
急いては事を仕損じるという先人の言葉もある、焦って機を読み違えては元も子もない。





……焦ってはならないと、わかってはいるのだが。





(どうしてこうも遊戯の周りから人が切れない!?)


新しく開発したゲームのテストプレイをしてほしい。
オレが遊戯を誘う理由としては妥当なところだろう。
実際にテストプレイヤーを募集しているプロジェクトもあるのだから、モクバも磯野も不自然には思わないはずだ。
この辺りで一度何かしらの行動を起こし、その反応を見て今後の対応策を考えよう。


そう思いタイミングを見計らっているのだが。


一、二時限目の休み時間は教室移動で、お友達連中と固まって移動していた遊戯に話しかけるチャンスは無かった。
今は三時限目の休み時間。
漸くチャンスを得られるかと思いきや。


(真崎やお友達連中はともかく、何故隣のクラスの御伽が遊戯の元に来る!?)


遊戯と御伽がゲームで対決し、それをきっかけに友人になったというのは以前遊戯本人から聞いた。
御伽自身もゲームデザイナーとして活動しているから、そのことで遊戯に意見を求めるというのも理解出来る。


が、納得出来るかどうかは別問題だ。





おかげで遊戯がオレの元に来ることもなければ、オレが遊戯の元に行くことも出来んではないか!


おまけに獏良までその輪に加わるものだから、ますます話し掛ける余地が無くなる。
ヤツも遊戯と同じくかなりのゲーム好きだ。
話が弾むのもわかるが、休み時間の度に遊戯に張りついているのはどうなんだ!?





(……まさか、御伽や獏良もオレ同様遊戯を好いているのではあるまいな!?)


表面上は平静を保ちつつ、どうにもオレらしくない思考に走ってしまう。





結局、遊戯に話しかけることは叶わないままに放課後を迎えてしまった。





(……仕方あるまい、次の機会を待つとするか……)


チャンスが無かった事を悔やむ暇があるなら、次に向けての策を練らねばなるまい。
次に登校出来る日を確認して、その時の状況に則した遊戯を誘う理由を考えておく必要がある。


そう思い教室を出て、昇降口に向かおうとした時だった。


「海馬くん!」





「……遊戯?」





その声に振り向くと、オレの頭の中を占領していた人間が其処にいた。


「あのさ、勘違いだったらごめんね?……海馬くん、もしかしてボクに何か用事あった?」


掛けられた言葉は意外なものだった。


一瞬、コイツは人の心が読めるのかと非ぃ現実的な考えが過ったが直ぐ様それを振り払った。
……大体本当にそうなら、遊戯はとっくにオレの気持ちを知っている事になるではないか。


「……何故そう思った?」
「休み時間とかにボクの方見てたでしょ?気付いた時にすぐ行けば良かったんだけど、話の途中で抜けるって出来なくて。」


「…………」





気付いていた。


オレが遊戯を見ていた事に。


だがあれだけ話に夢中になっていて、周囲の視線など気にしていない風だったにも関わらずそれに気付いていたという事は、遊戯も多少なりともオレを意識していたという事。





……これは少し、やり方を変える必要があるかもしれん。


「……やっぱり、勘違いだった?ごめんね変なこと言って。」
「謝らんでいい。それに勘違いでもないからな。」
「え?」
「……新しく開発したゲームの、テストプレイヤーを募っている。お前にその気があるならやらせてやっても良い。」


遊戯がオレを少しでも意識しているというのなら、多少強引な方法も取れるというもの。


「ホント!?それって、KCの新作ゲームで遊べるってことだよね!?」
「……どうする?」
「やるっ!!」


予想通り食い付いた遊戯に、内心苦笑する。


「言っておくが、後でレポートを提出してもらうぞ。これも業務の一環だからな。」
「うっ、わ、わかった……」
「何、プレイしてここが良かったとかこうした方が良いとかを書き出せばいいだけだ。」
「そうなの?それくらいならボクにも書けるかな……」





「……何だったら直接オレに言え。今日は家で出来る仕事ばかりだからな。」
「?」
「オレの家でテストプレイすれば、プレイして直ぐにオレに報告出来るだろう?それに万一バグがあった時、オレがいれば直ぐに対応出来る。」


家に来るのを拒むなら会社に来てもらう事になるが、それでも遊戯がオレの元に通う理由を作ることは出来る。
最低限の目的は達したが。





……さて、どう出る遊戯?


「……おうち行ったら、迷惑じゃない?」
「そう思っていたら最初から言わん。で、来るのか?来ないのか?」
「えと、それじゃ、お邪魔させてもらいます……」





手応え、あり。





END



あとがき。

8888ターンを獲得された竹取様からのリクエスト、

“なんだかモテモテな表くんにハラハラする社長”

でした。


……大変遅くなってしまい申し訳ございません!(土下座)


しかもコレ、表くんモテモテ……かなあ?


社長のヤキモキしている感じが少しでも伝われば良いのですが……


リクエストされた竹取様のみお持ち帰り可です。


リクエストありがとうございました。



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あきゅろす。
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