小話
☆ボクの夏休み。
※“はねモバ”のナカタミノル様への相互記念小説です。
ナカタミノル様のみお持ち帰り可です。
カタカタカタカタ。
カリ、カリ……カツン。
(全然わかんない……)
海馬くんはデスクに座って、パソコンとにらめっこ。
ボクはその傍のソファーに座って、課題とにらめっこ。
先に音を上げたのは、もちろんボク。
夏休みの課題で解らない所を教えてもらおうと、海馬くんの家で会う約束をして。
来てみたら、海馬くんは急に入った仕事を片付けてる最中。
ちょっとでも傍にいたくて、『課題してるからここで待ってていい?』って聞いたら『好きにしろ。』って返された。
……仕事に集中してるのは判るけど、せめてボクの顔見て返事してほしかったな。
出来る所だけでも、と思って開いた問題集。
案の定、すぐつまずいた。
(海馬くんは……まだ仕事終わらないかな……)
カタカタカタカタ。
流れるような動きでキーボードを叩いてる海馬くん。
真剣な目で画面の文字を見続けてる。
(かっこいいなあ……)
仕事してる時の海馬くんはかっこいい。
モクバくんや磯野さんにてきぱき指示を出してる時とか、国際電話にも当たり前のように英語ですらすら応対したりとか。
“仕事の出来る男”って感じ。
(かっこいい……けど……)
少し、寂しい。
海馬くんが夢を叶えるために頑張ってるのは解ってるし、ボクもそれは応援してる。
それでも、ボクの中のワガママな部分が顔を出す。
“仕事よりも、ボクを見て。”
「……遊戯。」
「ふえっ!?」
突然海馬くんに話しかけられて、変な声が出てしまった。
「そんなに見つめられてると、気になって仕方ないんだが?」
嘘っ!?
ボク、そんなに海馬くんのことじっと見てた!?
……仕事の手止めさせちゃって、悪いことしちゃったな……
「ごめんね、何でもないんだ。……ボクはいいから、仕事、早く進めた方が良いよ?」
無理矢理話を終わらせて、問題を解くフリをする。
……今海馬くんと話したら、ワガママばっかり言っちゃいそうだから。
「遊戯。」
「なぁに?…って、うわあ!?」
いつの間にか海馬くんがボクの傍に来ていて、いきなり抱え上げられた。
向かい合わせになるように膝の上に座らされて、蒼い瞳に見つめられる。
「か、かいばく……」
「言いたい事があるならはっきり言え。」
「別に、何も……」
「ならば何故、あんな顔でオレを見ていた。」
……ボク、どんな顔してたのさ……
「物欲しげというか、構ってくれオーラが全身から出ていたぞ。」
……バレバレだ……
「……じゃあ、言うけど……」
「ああ。」
「……し、仕事が忙しいのは判るけど、ちょっとくらい、ボクと話してくれてもいいじゃない。」
「ああ。」
「せっかく久しぶりに会えたのに、海馬くんのこと見てるだけなんて、そんなの寂しいよ……」
「ああ。」
「…………」
「ん?」
「……たまにで良いから、仕事じゃなくて“ボク”を優先してよ……」
「遊戯……」
…………ボクのバカ。
こんなこと言ったら、海馬くんが困るって解ってるのに。
海馬くんはKCの社長なんだから、ボクより仕事を優先させるのは当たり前なのに。
……ボクは何時から、こんなワガママになったんだろう。
「……そんなことか。」
「そんなことって何さ……」
ちょっとムッときた。
海馬くんのこと、困らせたくなくて黙ってたのにさ。
「遊戯。」
「ふわっ!……ちょ、海馬くん!?」
み、みっ、耳元で喋んないでよ!?
「お前はオレを誰だと思っている?」
「だ、誰って……」
「海馬コーポレーションの社長たるこのオレが、恋人のワガママ一つ叶えてやれんような小さい人間だと思うか?」
「こここ、恋人って……」
「お前しかいないだろう。」
それは、確かに、そうなんだけど!
「一つ、良いことを教えてやろう。」
「いい、こと?」
「この仕事が片付いたら、オレは明日から夏期休暇だ。」
「夏期、休暇?」
「五日間ほどな。その間、お前は家に泊まると良い。……お前の言うワガママとやら、この機会に全て叶えてやる。」
「……本当?」
「お前に嘘をつく理由はなかろう?」
「本当に、本当?ボク、本当にたくさんワガママ言うよ?」
「全て叶えてやると言っただろう。むしろ臨むところだ。」
……反則だよ。
そんな自信満々な顔で言われたら、ボク、限り無くワガママになっちゃいそうだよ。
「ワガママになっていいって言ったの、海馬くんなんだからね。」
「そうだな。」
「……本気でワガママ言うから、覚悟してよね?」
「言ったはずだ、臨むところだとな。」
額同士を合わせて、笑い合って。
明日からの夏休みのことを考える。
ああ、一回家に帰ってお泊まりの準備して来なきゃ。
海馬くんと一緒にしたい事、いっぱいあるんだ。
長くて短い夏休み、キミとの思い出をたくさん作りたいから。
だから、覚悟して?
抱えきれないくらいにたくさんの、ワガママと思い出をキミにあげるから。
END
あとがき。
海表甘々。
果たしてリクエスト通りになっているでしょうか……?
今はこれが精一杯……
あ、バラは出ませんから。(←このネタが通じると信じてます)
ナカタミノル様、相互ありがとうございました!
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