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高銀(短編)
お前じゃなきゃ!!(学パロ・卒業式)

今日は卒業式。
校庭には最後の記念に写真を撮る生徒や、その保護者達が集まっている。


泣いてる者、
喜んでる者、
祝っている者…

それを俺は誰も居ない元教室から見下ろしていた。






〈お前じゃなきゃ!!〉






高杉に最後に会ったのは今から1年前。


情事後アイツは言った。
『銀時ィ…俺が居なくなったら、どうする?』


あの時は眠くて疲れて高杉の言葉なんて殆ど聞いてなかった。だからちゃんと答えたのかすらも分からない。


あれから高杉は消えた。
電話もメールも繋がらず、家にも居なくなった…



高杉晋助は俺の恋人だ。

高校で知り合って、高杉から告白されて、なんやかんやずっと一緒に居て俺を大切にしてくれて……本当に本当に大好きだった。


大好きだったのに…
アイツは消えた。

誰にも言わずに、なんで?どうして?高杉…どこ?!

初めのうちは毎日探し回っていた。

街中はもちろん、隣街も商店街も皆全て。

しかし…見つからなかった。
そして月日が流れ、俺は探すことを諦めた。


アイツの声も温もりも笑顔も…
会わないうちに全部忘れちゃうよ……。






「一緒に卒業するって…いったのに…高杉のバカっ」


教室の窓辺に佇んで、俺は声を殺して泣いた。
溢れる涙が止まらない。



俺は高杉の何を知ってたのか。
今の高杉しか知らなかった。いや、今の高杉すら知らないかもしれない。

アイツの夢も家族も、中学時代も、その前もそのずっと前も!!!



なんで俺は高杉を好きなんだ?
アイツの何を知って好きなのかって話だよな。

「高杉っ…高杉ぃ……会いたいよ」





『銀時ィ好きだ』

『愛してる』

『テメェも好きだろ?俺を…ククッ』




高杉は俺に愛することを教えてくれた。


だから俺は高杉を…


愛しても良かったんだよね?
高杉は飽きっぽいからきっと俺が飽きて消えたのかも。

あぁ、そうだ。


俺飽きられたんだ。
1年経って漸く気付いた。

俺に会いたくないから学校に来なくなったんだ。

俺が居たから…




そしたらやっぱり涙が溢れて来た。

楽しかった記憶が蘇ってくる…


ダメだ。俺は…高杉が大好きなんだ。
この先もずっと。
アイツが俺に飽きても、俺は大好きなんだ!!



「っう……たか、たかすぎっぃ…くっ」


すると、けたたましい……と言うか凄まじい足音が廊下から聞こえてきてから俺の居る教室の前まで来て。



そして扉が蹴り破られた。
俺は何が起こったか理解出来ず、蹴り破られた扉を瞬きしながら見つめてしまった。

いや、スライドしろよ。



「はぁはぁ…っ銀時ィ!!」

スライドもせず豪快に蹴り破った本人は扉のことなど無かったかのように、俺の元えと近づき力強く抱き締めた。

一瞬息が止まりかけた…

あぁ…懐かしい声、懐かしい香り。


「銀時ィ…銀時、会いたかった」


溢れる涙は止まることがなかった。
抱き締められた瞬間香る高杉の匂いが嬉しくて。
温かくて。
懐かしくて…


しかし俺はハッと気づいて高杉の頬を右の拳で殴り飛ばし、その手で自分の頬を拭った。


「テメェ…何しやがっ」

「お前の方こそ何してやがった!!今まで連絡も繋がらなくて……1年だぞ!?1年!!!?ドコで何してたか言え」


しかし高杉は左頬に手を当てたまま俺をじっと見詰めたまま動かない。
そんな高杉の胸ぐらを掴み上げ、今までの怒りを全てぶつけてしまった。


「何で居なくなった!……理由、言えねーのか?俺に言えないようなことしてたのかって聞いてんだよバカ杉!!俺なんか飽きて捨てたんだろ!?嫌いなんだろ!?おい!一緒に卒業するって約束だってしただろ!!!なのに……なのに高杉っ…」


「…悪かった。本当に」


込み上げてきた悲しみと、怒りでその場に崩れ落ちた俺の頭を撫でる高杉があまりにも優しくて俺はその手を掴んでしまった。

そして、


「…会いたくなかった」

嘘だ…


「お前なんか…顔も、っ見たくない」


嘘だ…嘘だ!何言ってんだよ俺!!



「お前なんか……大嫌いだ!!」



大好きなんだよ!!
なのに…なんで言えないんだよ。


掴んだ高杉の手を離すことなく言い放てば、高杉は黙って俺の指に何かを嵌めた。



不思議に思って顔を上げれば、高杉は俺の薬指にキラキラと光る指輪を愛しい物のように撫でていた。


「…えっ?な、なにそれ…」


「俺ァ…今、銀時に嫌われたら生きて行けねェくれェ依存してる」


高杉の言ってる意味が分からない。
涙でぐちゃぐちゃの俺の顔に高杉は何度も小さくキスして、それからまた強く抱き締めた。




「銀時の居ない日々は地獄だった…。言ってなかったが、俺の親父はどこぞの会社の社長でな、無理矢理海外に連れていかれてた。携帯は没収、友人との交流は禁止、帝王学しか学ばせてもらえなかった…」


「高杉…」


知らなかった。

高杉の親父が社長…で、今まで海外にいたとか。

だから携帯に連絡つかなかったのか。



「悪かった…俺は離れてもテメェのことしか考えてなかった。俺が居なくても俺達は大丈夫だと思ってたら…そりゃァ俺の思い違いだったらしい」



高杉は俺から離れて立ち上がった。
驚いて上を見上げれば、初めて見た悲しそうな高杉の顔。



「会いたく…無かったくれェ嫌われたんだな。俺ァ」



違う!!違うんだよ高杉!!
なんで声が出ないんだよ!!高杉がいっちまう。
また…離れちまってもいいのかよ俺!!


俺は背を向けて歩き出した高杉に自ら背中に抱き付いた。



「銀時ィ?」

「……っ、行くなバカ。もう、俺から…俺の前から消えんじゃ…ねーよ高杉!!!」


高杉は素早く振り返り、噛み付くように唇を合わせた。
久しぶりの高杉のキスは熱くて激しくてクラクラする…
けど、気持ち良くて愛しい。
背中に腕を回し、もっと深く深くと請えば高杉はフワリと笑った。



「ツンデレ」

「…っうるせー」


大好きだよ、って気持ちを込めて俺は自分からキスをした。

ちゃっかり服の中に手を入れてる高杉の手を掴み上げれば、その左手には俺と同じ指輪が付いていた。



「俺はテメェのモンだ。テメェは俺のモンだぜ」

「浮気したら殺すよ?」

「ククッ、テメェもな」



良く見たら1年前より髪が少し伸びて、ちょっとカッコ良かった高杉。

何も変わってなくて俺は嬉しくて嬉しくて、教室なのに押し倒してしまった。



今ならきっと言える!!




「高杉、いや……晋助大好き!!カモ」


「ククッ、カモじゃねーだろ銀時」



素直になれよ、って頭を撫でられたらそりゃ嬉しくて猫みたいに頬に擦り寄ってしまった。



「よし、一緒に卒業証書貰いに行くか」

「え…あぁぁあ!!!高杉そそそ卒業出来んの!?」

「一応担任には言っといたからなァ。1年はアッチの高校行ってたから卒業は出来る」


高杉は上体を起こして、ポケットから何かを取り出し俺の手に鉄の何かを置いた。


それは小さな小さな鍵で。どこの鍵なんか聞かなくても分かる。



「親父に言って新しいマンション買った。明日から住もう」

「晋助……お前っ〜〜///!!もうどこにも行くな!!」





教室から見下ろしていた桜木下を、今は卒業証書を持った高杉と一緒に歩いた。

桜散る中のアイツは本当にカッコイイ。


「大好きだよ」

「…当たり前だ」








後から知った話だが、高杉は会社を継ぐらしい。

だが、俺とも居たいってワガママを貫いたら俺と同じ大学を受験して、経済学科に見事入学しやがった。


俺は文芸学科、高杉は経済学科校舎は隣だが毎日一緒にいられる!!!





1年いなかったのが嘘みたいに今は幸せだ。


「やっぱり俺にァテメェしかいらない」



ボソッとベットで呟いた高杉の言葉が嬉しすぎて、俺は高杉に抱き付いた。


(俺だってお前じゃなきゃ………嫌だよバカ)






完、

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