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高銀(短編)
自分が自分である方法(高銀♀)
 

自分が自分である方法なんて

何一つない。

自分がどれだけ醜いか…

自分がどれだけ最低か…

自分がどれだけ……


「…とき…ぎ……銀時!」

「はっ!?…あ、あぁ高杉か。何?」

「何度も呼んだのに気づかなかったか?」

バカ、と言われて頭を叩かれた。ごめん、って言えば高杉は鼻で笑った。

良かった…怒ってないみたいだ。



高校に入って俺は高杉晋助という男に会った。

他人とは違う銀髪の髪色に、紅い瞳。


俺は小さい頃からいじめにあっていた。
蹴られたり殴られたり蔑まれたり…振り返れば最悪の人生だったんだ。
学校なんて大嫌いだった。

でも、親は「ちゃんと高校に通いなさい」って何度も励ましてくれた。

「高校生になったらきっと銀時は変わるわ。だって貴女は綺麗だからね」


母も綺麗な銀髪だ。きっといじめにあったり、俺と同じ人生を歩んでただろう。でもカッコイイお父さんと結婚した。

だから大丈夫だ!
…と俺は必死に思った。
必死に思い込んで、高校へと進学した。




そしたら出会えた。

高杉晋助に。

同じクラスで隣の席。

そして初めて俺を見た時、『良い色してんなァ。その髪。似合ってる』って言ってくれた。

俺は死にたくなるくらい恥ずかしかった…けど、死ぬほど嬉しかった。


それからは何故か高杉から猛アタックされて告白されて、出会って半年で付き合い始めた。


こんなにカッコイイ人で
優しくて
強くて
ちょっと不機嫌そうな顔だけど
俺だけにはいつも笑ってくれる

こんな人が本当に俺なんかと付き合うなんて、何かの間違いなんじゃ…って何度も思った。


けど高杉は


「逆だバカ…俺の方がテメェにゃァ合わないようなもんだ」


っていつも言ってくれる。
なんで?
なんでと聞いても知らん顔される。





「銀時さっきの話ちゃんと聞いてたか?」

「あ…いや、ごめん。何だっけ?」

高杉はまた俺の頭を叩いてため息を吐いた。
叩かれた頭を擦りながら、俺は首を傾げた。


「だから…っ!また今度にする」

「えっ!?な、何?ごめん高杉!!ちょっ、高杉!?」

高杉は逃げるように教室から出ていってしまった。



やってしまった……
高杉を怒らせてしまったかな。
だったら謝らなきゃ!

でも…
追いかけて邪魔だ!なんて言われたら俺は死ぬ。

今高杉に嫌われたら俺は死ぬかもしれない。

それくらい大好きで愛してる。



「クスクス…あーあ、坂田さん高杉君のこと怒らせちゃった」

「別れちゃえばいいのに」


教室の外から見ていた他のクラスの女子が笑いながら言ってきた。

高杉は他のクラス…いや、全女子生徒の憧れの存在である。

それもそうだ。
だって完璧なんだから…

俺とは似ても似つかない……


「こら貴様ら!!デバガメなんて恥を知れ!!しっしっ」

「ちょっとぉー!桂子さんやめてよー」


女子達を追い払い、教室に入って来た同じクラスで唯一の女の子の友達・ヅラ子は俺の顔を見ると目を見開いて驚いた。

「き、銀時泣いてるのか!?クソ…さっきの奴等に天誅を…」

「いいよ。ありがとうヅラ子……つか、デバガメは古いから」


追い払った子達が逃げた方を忌々しげに睨むヅラ子。
あぁ、綺麗な顔が台無しだよ。


なんで俺の周りはこんなに綺麗な人ばかりいるのだろうか…。


「高杉のヤツとさっき廊下で会ったのだが…ケンカでもしたか?」
「…違う。俺が悪い、かな。ちょっと先帰る。ありがとな本当に」


机の脇に掛けてあった鞄を掴み、ヅラ子に顔を見せないよう下を向いて俺は逃げるように教室から去った。




俺は高杉とは釣り合わない。
前から思ってた。
なんて自分は醜いのだろうか、って。

あんな美しい人の側にいてはいけないんだ。

帰り道、走って走って走りながら泣いて、家についたら自室に籠って泣いた。

涙が枯れるまで泣いて、気づけばもう3日も経ってしまった。



俺は震える手で高杉にメールで

『ごめん。別れてください』

って送った。

そしたらまた涙が溢れてきた。枯れた涙はまだ出るんだ…

高杉、
俺を『好き』って言ってくれてありがとう。


自分が許せない。
どうすればいいのかわからない。


だったら、

死ねばいいんだ。


丁度目の前にあったハサミを掴み、左腕に当てた。

そしてゆっくり刃を皮膚に当てて力を少し入れて切ってみれば、薄い皮は簡単に切れた。そしてそこには赤い液体が流れ床に滴を垂らした。


あぁ…こうすれば簡単に死ねるんだ。


その時、携帯から着信が来た。
顔だけ携帯に向ければ『高杉』と…



「た、高杉……っ!!な、なんで俺…腕を……高杉っ」

別れようってメールしたのに電話に出て良いのだろうか…
躊躇っていれば電話はきれ、次はメールが届いた。


『電話取れ』


それは簡文で、でも取らなきゃいけない気になり何度も来た電話を意を決して取った。



「も…もしもっ」

「誰が別れて言いなんていった」


ヤバい…高杉キレてる!?

「お…俺です」

「……今ドコにいる」

「家です」

「じゃあ今行く」

「ぅえっ!?い、今!でも…学校じゃ…」

「待ってろ。あと、」

慌てる俺を他所に、高杉は低く、そして強い言葉で言った。


「俺はテメェを離さない」















一応鏡を見たが酷い顔だ。くまは酷いし、目は腫れて髪は何とかしたけど腕が…
包帯を巻いておいたが、高杉に聞かれたら何て答えればいいか。


「高杉…ごめん」

「謝ってんじゃねェよ、バカ」

「だって……って!!!おいィィィど、どこから…」

つい返事をしてしまったが、振り返れば部屋のドアが開かれ、高杉が息を切らしながらに立っていた。


3日ぶりの高杉はやっぱりカッコイイ…

なんて見惚れているのも束の間、俺はハッとして高杉に怒鳴った。


「何で家入ってんだよ!!」
「あァ!?テメェが家に居るっつたからだろうが」

「いや…そうだけどさ、インターホン鳴らそうかまず。つか、鍵は?」

「窓が開いてたぜ」

「〜〜っ!!ハァ…」


怒る気力を失って、ため息を吐けば、高杉は俺の前に来て力強く抱き締めた。



「別れるなんて…言うな」

「高杉…」

あまりにも言い方が切なくて俺は涙がまた出そうになった。

でも、俺だって一生懸命決めたことだ。
こんな不法侵入者を簡単に許したらダメだ!



「俺は別れたいんだ」

「…理由を言え。俺が納得するのをな」

一旦高杉から離れ、息を整えながらいつもの調子で言った。


「だってさ…俺とお前じゃどー見ても釣り合わないだろ?つか初めから合わなかったんだって」

「…あとは」

「だから…あと……高杉は皆にモテる。俺より可愛くて女の子らしくて美人で綺麗な子と付き合いなよ…マジで」


言いながらどんどん惨めな気持ちになり、俯き切った腕を握り締めた。

すると、高杉は俺の包帯のある方の腕を掴んで包帯を解きやがった。


「おい!!やめろ!高杉」

「テメェの言い分はそれだけか!?なら納得出来ないししねェ」


高杉は俺の切れた腕をじっと見つめ、

「これ…リスカしたのか?」


返事にいたたまれなく視線を外せばその痛々しい傷を高杉は舌でゆっくりと舐めた。


「なっ?!た、たたたた高杉さん!!痛っ…やめ、ろよ…くっ」


「テメェの傷は俺の傷だ。そこまで追い込んで、気づいてやれなかった俺の責任だ。悪かった…」


あの高杉が謝る!?

驚いてまじまじと高杉を見れば、恥ずかしいのか俺をベッドに押し倒してその上からまた抱き締めた。



「銀時よォ…テメェ間違ってんぜ」

「は?何を」

「さっきの。可愛くて女の子らしくて美人で綺麗な子だァ?全部テメェそのものだっつー話だろうが」

高杉は髪から耳、額に頬と小さくキスを降らせて擽ったくて身体を捩ろうとすれば両腕を捕まれた。




「テメェの意思で別れるなんて金輪際言うな。俺は銀時に惚れてる。銀時以外いらねェ。好きだ、愛してる…」

「高杉……ぅっ…ひっく、うわぁぁぁぁあん!」


子どもみたいに泣き出したら高杉はポンポンと頭を触りながらあやしてくれた。その意外な優しさが

好きだ。

こんな俺を愛してくれてありがとう…



「た、高杉っ…」

「なんだ?また別れようだったら今度こそ…」

「好き!大好き!!高杉ごめんね」

「っ…もう、心配させんな」

俺は初めて高杉に自分からキスをした。
唇だけ合わせる拙いキスだけど高杉は嬉しそうに笑って、何度もキスをした。


そして俺は、高杉が服に手を入れて胸を揉みだした時に思い出した。

「あ、あのさ…高杉っ…あっ」


「んだよ、あ。今日ゴム忘れたから中出しするぜ」

「さ、最低!って違うの!!あ…あのさ…」

「何だ早く言え」


焦れったくて高杉は俺の服をたくしあげ、胸の突起に吸い付いた。

「ひゃっ…ちょ、待って……ん、3日前に…さ、んぁっ、高杉何か…いいかけたよ、ね?」

途切れ途切れにそう聞けば、高杉も思い出したような顔をし、何かポケットから取り出して俺の目の前に出した。




「ら…来週、空いてるよな?」

「?多分空いてるよ。それが何?」

「ハァ…銀時誕生日だろうが。デートしよう」


差し出されたのはデスティニーランドのチケット。しかも2枚。


俺は目を見開いて驚いてしまった。
だって…
人混み嫌いで夢の国なんて合わない高杉晋助がまさかの……まさかのデート発言なんて!!



「行きたく…ないか?」

何も言わない俺に対して、高杉はばつが悪そうに頭を掻いた。
だが、俺は嬉しくて嬉しくて首を横に振りながら高杉を思いっきり抱き締めた。



「超行きたいです!高杉にミッキーのカチューシャ付けたいです!!ありがとう」

「…俺は付けないがな。まぁ、良かった」


あぁ、なんて幸せなんだろうか。
高杉の笑った顔がこんなにも俺を幸せな気持ちにしてくれるのか……。



「高杉」

「なんだ?」

「大好き。今なら幸せ過ぎてで死ねる」





自分が自分である方法…

それは
1人でもいいから自分を認めてくれる人がいること。


ありがとう高杉…







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あきゅろす。
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