8.
「奏夜くんにも弾けると思うんだけど、結構難易度の高い連弾用の曲だから、二人で頑張ってね。私は二人の指導を頼まれたのよ」
「ちょ、ちょっとまってください!お、俺連弾は…!!」
いや、連弾自体に嫌嫌要素はないんだけど、こいつと二人でってところが!!
「大丈夫よ。奏夜くんにでも弾ける曲だし、相手はあの中条くんよ?心配することはなにもないわよ」
なんか俺と中条の身分の違いがくっきり分かるような言葉を有難うございます!
「あ、あの、そうじゃなくて…っ!!」
「大丈夫だよ、奏夜」
「はッ!?」
声のした方を見れば、あいつが爽やかな笑みを顔に貼り付けて俺の方に歩いてきて。
「俺達なら、きっと出来るよ、頑張って優勝目指そう!」
俺の手をとって、高らかに宣言しやがった。
そんな優等生なあいつに先生はうっとり見とれていて、もう俺の意見を聞く気なんてさらさらないらしい。
「中条くん…っ!良い宣言だわ、先生も頑張って指導するからね!」
「はい、よろしくお願いします」
「ええ!任せときなさい!…三人の力を合わせれば、優勝なんて簡単よ!!」
最後には二人で手をとりあって感動劇まで繰り広げられる始末。
「あの…」
「奏夜くんも!頑張りましょうね!!」
「え、あ」
「よし!三人で円陣組んで、気合を入れましょう」
「良いですね、それ」
…先生、テンション違いすぎます!
断ろうにも高いテンションに押し切られて、俺は結局何も言えずにコンクールの件を受け入れることになった………強制的に。
「それじゃあ二人とも、優勝目指して…お――ッ!!」
「お――っ!」
「ぉ……」
最後は三人で円陣組んで、気合とやらを入れられた…。
先生とあいつは気合が入ったらしいけど、俺は逆に気合が抜けていったような気がする。
「じゃあ、今日は一応楽譜だけ渡すわね。また明日もこの教室で練習するから、掃除が終わったらすぐに来て」
「はい、わかりました」
「…わかり、ました…」
「では今日のところは解散!」
「「有難うございました」」
とりあえず礼だけはちゃんとして、楽譜を貰って教室を出た。
連弾…連弾って、二人の息が合わないと無理じゃなかったっけ………
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