1.
放課後、俺は早速先生が持つ教室へいく。
すれ違う人を避けながら、楽譜に目を通してもう一度確認する。
今日こそ、あの弾けなかったパートを合格するんだ。
八日間、ただ勉強して過ごしてきたわけじゃない。
どうしても弾けなかったあの部分を、何度も何度も、弾けるまで練習していた。
絶対に完璧、といえるほどに仕上げてきたんだから。
「…それでも、あいつには劣るだろーけどな」
あいつの紡ぐピアノの旋律が耳へよみがえる。もう8日も聞いていないけれど、それは鮮明に頭に残っていた。
「…………ちっ」
悔しい。
追いかけても追いかけても、絶対に追いつけないもどかしさが。
俺とあいつとの間は広がっていくばかりで。
…いつか絶対に追いついて、追い抜けると、心のどこか片隅で思っている自分が、悔しいんだ。
教室の前につくと、中から楽しそうな人の話し声が聞こえた。
先生の声がするのはわかるけど、あと一人の声が良くわからない。
それでも何かお取り込み中の様だから、話がおわるまで外で待っている事にした。
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