12.

「………あ」


音楽室へ続く階段に、人影が現れる。

あいつだ。


優雅に、むかつくくらい優雅に階段を降りてくる。

風も吹いていないだろうに、髪の毛がキラキラと揺れているのはなぜだ。
どこかに扇風機でも設置しているのか。



「……あれ?」


階段を下りてくる影は、あいつだけではなかった。

もう一人、あとからあいつを追いかけるようにして下りてくる。


「…先生?」


それは、俺の特別レッスンを担当するあの40もそこそこのおばさん先生だった。


先生が何かを言うと、あいつが立ち止まって振り返る。

そこに先生は追いつくと、色々とあいつになにかを言っているようだった。


「……?」


ここからじゃ結構遠くて、口の動きがわからない。

わかったとしても言っている事がわかるような技術は持ち合わせていないけれど。


先生が何かを言い終わると、あいつは少し思案する素振りを見せ、そしてにこやかに頷いた。

それを見た先生の顔がぱっと明るくなる。


それから二人で笑って話をしながら階段をおり、見えなくなった。



「…………なんだ?」



なんの話をしていたんだろう。



そして、この胸のもやもやは何を表しているんだろう…





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あきゅろす。
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