10.
「………はぁ」
と、別にあいつを見たいわけでもないのだけれど、知らずとそんな事を考えてしまう。
そうやってこの教室からあの階段を、あの嫌な日から八日間ずっと見続けているのだ。
そして、あいつの姿を見る度にあの夢を思い出して胸がむかむかする。
嫌なら見なければいいのに、なぜか視線は向いてしまうんだ。
しかも、無意識に。
――キーンコーンカーンコーン……
「あ、予鈴だ」
「じゃあ俺等教室かえるわ。っと、次の休み時間古典の辞書借りにくるからー」
「あ、俺も俺も!」
「……二つも持ってねぇよ」
笑いながら自分の教室にかえっていく二人を見て、少し笑いが零れる。
二人は俺の親友で、一人は普通の黒髪、だけど顔は綺麗な男前の坂井ゆう。
もう一人は金髪だけど爽やかスポーツ青年の華群誠一郎(はなむらせいいちろう)。ちなみに運動は苦手だ。爽やかスポーツ青年なのに。
そして、二人ともどっかの会社となんとかグループってとこの息子だったりする。
……多分気付いてはいるだろうけど、この学園は将来音楽の分野で活躍しようとする人達を集めた超有名、お坊ちゃま校だ。
ちなみにここは男子校だけど、実は同じ感じで女子校もあったりする。
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