9.
成績が落ちたことも気にせず飄々としている彼らをみて、俺も溜息が出る。
良いな、俺もこんなに自由になれたら良いのに………。
誰に、何人にどんな風に抜かれようと、全く気にせずに、まわりからもなんとも言われない。…そんな自由を求めたところで、学園二位の時点でそれはもう無理な事なのだろうけど。
「次のピアノ試験で頑張れば良いさ」
「あ、でもその前に……夏休みだろ!」
「……俺に夏休みはないけどな」
「「嫌味かコンニャロウ!」」
「…お前等の存在のが俺にとって嫌味だっつの…」
学園上位者に、夏休みはない。
噂に聞いたところによれば、夏休みの99%がレッスンなんだとか。
…夏休みじゃなくて、夏補修って感じがするのは俺だけか。
まだ「夏休み」の事で盛り上がる二人の話をぼーっと聞き流しながら、俺の目は自然と音楽室の方角へと向いた。
ここから音楽室は見えない。
だが、音楽室へと向かう階段なら少しは見る事ができる。
「………」
今は昼休みだが、あと少しで予鈴が鳴るはずだ。
学園トップともあろうお方が、この有効な休み時間を利用しないはずはないだろう。
必ずあいつは、予鈴とともにあの階段に姿を現すんだ。
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