2.
しかも俺限定で甘えん坊なんて、人見知りにも程がある。
まぁそれが嬉しい俺も、俺だけど……過保護なんだよ!!
そうじゃなくても奏多は母性本能を刺激すんの!!
夕飯を食って(その間にも奏多に上手いぞーなんて褒めまくっていたのはあえて省くとして…)風呂に入って体を休めた後、自分の部屋に入ってピアノの前に座る。
学校にあるみたいなでっかいグランドピアノではなく、細長い箱のようなアップライトピアノだけど、こんな俺にはこれぐらいが充分で。
楽譜を譜面立てに置いて、今日止められたところをもう一度何度も練習する。
ゆっくり、滑らかに、丁寧に…
――ポン…、ポロ…ン
「…だめだ……、」
どうしても指が止まってしまって、音のリズムが崩れてしまう。
どうすれば良いんだろう。やっぱり指を慣らしていくしかないのか?
―――こういう時、あいつだったら、……
「っ!!」
ふいに浮かんだあいつの顔を頭を振る事でかき消した。
なんでよりにもよってあいつなんだ?今まではこんな事考えなかったのに…
どうして、今日は。
もしかしたら、今日は初めて結構喋ったからかもしれない。うん、絶対そうだ。
だから、あいつが頭の最前線にいるのは不思議な事ではないはずだ。
考えを改め直して、もう一度ピアノに向かった。
大丈夫、こんな時いくらでもあった。
そんな時は、練習量で乗り切ってたじゃないか。
今回もきっと、頑張れば出来るはずだ。
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