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Happy New Year(来良組)
  除夜の鐘の音が聞こえる。
この都会、東京でもちゃんと除夜の鐘が聞こえることに感心しながら帝人は普段と変わらずパソコンに向かっていた。
年の瀬なのだから埼玉の実家に帰省する事も考えたのだがこの街で再会した、出会った人たちを思い浮かべ彼らに挨拶してからでも遅くないと帰省する時期をずらしたのだ。
そのため年越しは一人寂しいモノになったが朝になれば杏里や正臣と初詣の約束をしている。
なので夜はチャットに入り浸るつもりだった。
チャットでも同じことを考えている人達が多いようでいつものメンバーが揃っている。
紅白や年越し番組などの話題で盛り上がっているといきなり部屋のドアが音を立てて開いた。
帝人が驚きそちらに視線を向けると奇襲成功とにやけ顔を浮かべる正臣が立っていた。
鍵は掛けてあったはずなのになんで、
そんな疑問は正臣が見せびらかすように持っている鍵が物語っている。
「そんなことをさせるために合い鍵渡したわけじゃないんだけど?」
確かに何かあったときのために正臣には合い鍵を渡していたが渡した早々からこんな奇襲を受けるとは思わなかった。
もしかして合い鍵が欲しいと言ったときこの事も含まれた上で頼んできたのかもしれない。
睨むように正臣を見る帝人に当人は悪びれた様子もなく帝人に向かって高らかに宣言した。

「今年納めのナンパをしよう!」


ああ、来年も正臣に振り回されるな
帝人は心中で呟きつつ正臣に引きずられるように寒空の下連れ出された。




         ♂♀




そうして連れてこられたのは池袋の名所の一つ、池袋駅にあるいけふくろう。
駅の一角にあるため待ち合わせ場所にも適しており今宵も何人か待ち合わせしているのか人が立っている。 
その光景はいつものことなので帝人は差ほど気にとめるつもりは無かったのだが見知った人物を見つけ思わず足を止めた。
地味な色のコートを纏い、ショートボブ
髪型で眼鏡に胸が大きい。
よく一緒に行動している少女に似ている。
そう帝人が気づいた事に気付いた正臣は「んじゃ、帝人は彼女のナンパよろしく!」といって帝人の背中を押した。
力強く背中を押されよろめくように近付いてくる帝人に気づいたのか振り向く少女はまさしく二人の知人で、
「そ、園原さん…」
「あ、帝人くんと紀田くん」
二人と視線が合うと杏里は柔らかく微笑んだ。
「遅くなってごめんなー。帝人がなかなか準備しねーもんだから」
「いえ、誘ってもらえただけで私は…」
話の見えない帝人は正臣と杏里の会話の内容が理解できない。
戸惑うように交互に見ているとそんな帝人の様子を楽しむように先と同じ調子で正臣は二人に言う。

「んじゃ、行きますか」

どこへ?そんな帝人の問いは着いてからのお楽しみといって杏里にも黙っているように頼み教えてくれない。
時間も時間、そして大晦日。粗方は予想出来、帝人は苦笑して先陣行く正臣に杏里とついて行くことにした。




         ♂♀




そして帝人の予想通り、着いたのは池袋からそんなに遠くない神社。
ここも年越しの賑やかさで人が溢れるように行き来している。
三人ははぐれないように気をつけながら境内の中を歩く。
様々な屋台が並び、活気に満ちている。
除夜の鐘はいつの間にか鳴り止んでおり、何やら掛け声が聞こえる。
「お、ギリギリだったみたいだな」
正臣の呟きに帝人と杏里は聞き返すように揃って正臣を見るが彼は気付いていない。
「サン…ニィ…イチ 」
カウンドタウンが始まっていると帝人と杏里が気付いた時には正臣は二人の手をそれぞれ握りカウンドタウンに合わせて二人を交互に見つめてとバンザイと両手を上げた。
「ハッピー ニューイヤー!」
瞬間その場にいた全員が一斉に盛り上がる。
年明けだ。

12月が終わり一年が終わり、来る1月そして新たな年。
新たな一年の始まり。

今年はどんな一年になるだろうか。
帝人は正臣と杏里の顔を見た。
視線が合った二人は揃って微笑んだ。
きっと去年以上に楽しい日々になるに違いない。

「あけましておめでとう。正臣、園原さん、今年も宜しくお願いします」
「おう、宜しく」
「私も宜しくお願いします」



新年の挨拶を済ませた後、そのまま初詣をして初日の出を見ようとなり 、そこで門田達に会ったことや今年も相変わらずらしい静雄と臨也の喧嘩に巻き込まれかけたのはまた別の話。



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あきゅろす。
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