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「もう逃げ出さない」(帝正)



立ちはだかる壁。
それがどんなに高いものだって俺は諦めるつもりはない。
諦めたらそこで試合は終了だってどこかの漫画で言っていた。
確かにその通りだ。
かつて俺が諦めたから…いや、逃げ出したからこそ今俺はここにいるのだから。
あそこでもし俺が逃げ出さずにいたら…。
そう何度自問自答しただろう。
しかし答えは現実はどんなに後悔したって変わらない。
過去が変えられないように、どんなことを思ったって現状が変わることは決してない。

でも、これからは変えられる。
自分の行動次第でどうにだって変えられる。
良くも悪くもそこから動き出す。
だから俺は足を止めない。
この先にどんな困難が待ち構えていようと俺はあの場所を守るために…。

頭を働かせ。
考えることをやめるな。
どんなことでもいい、思い出し、考え、導き出すんだ。

正しい答えを…。





     ♂♀





そして無情にもチャイムは鳴り響いた。
「終わった…同時に俺の人生も終わった…」
「バカなこと言ってないで終わったなら帰るよ」
解答用紙の回収が終わり終了の声がかかると俺はそのまま机に突っ伏した。
現在2月末。学期末テストの赤点受賞者対象の再テスト終了直後。
その傷心しきった俺に浴びせられる冷ややかな言葉。
顔だけ声のした方へ上げるとそこには帝人が立っていた。
先生が出て行った頃合いに入ってきたのだろう。
なんせ帝人さんはこのテストを受けていない。受ける必要もない高見の存在なのだから。
そして俺の臨時家庭教師でもある。
「どうだった?」
「死んだ」
「やっぱり」
「やっぱりってなんだよやっぱりって!」
未だに動く気のない俺を見てか開いた隣の席へ腰を掛け様子を聞いてくる帝人。
確かに手ごたえは既に本来のテスト、及びに帝人との勉強会でもなかったがはっきりそういわれると結構傷つくものがある。
別に頭は悪くない方だと自負しているつもりだが出題範囲の広い学期末テストでは復習の多さに嫌気がさしヤマ賭けしたのが敗因。そしてこの赤点者救済テストでは弱点を中心として帝人に勉強を教えてもらったが結局弱点克服する前にテスト当日を迎えこの始末。
「だって大丈夫とか言って遊びまくってたのはどこの誰だっけ?」
「返す言葉もございません」
敗因は自分にありました。
「少しばかり息抜きしたっていいじゃないか」というときっと「その息抜きが長い」「初めからやる気ないでしょ」と言われるのがオチなので黙っておく。
何も言い返せず認めることしか出来ず俺は気分を切り替える様に勢いよく立ち上がった。

「よし、ナンパに行こう!」

呆れた帝人の顔を無視して俺は夕闇染まる街へ繰り出した。







そして数日後のテスト返却日。
返ってきた解答用紙を見て俺は震えた。
「? どうだったの?」
俺の異変に気付いてか解答用紙を覗き込むように近づいてきた帝人を思いっきり抱きしめた。
「59点!合格ラインは50点だから余裕で通過だ!」
「それは余裕とは言わない。…けど、おめでとう」
「これも帝人先生のおかげだ!つーことで何が食いたい?」
「は?」
抱きしめるとすぐに突き放されたが褒める様に頭を撫でられる。
苦手範囲にも関わらずこの点数を取れたのは一重に帝人のスパルタ勉強会のおかげだ。
礼として帝人の好きなものをおごってやろうと思ったのだが思考がついてきていないのか帝人はどういうことかとキョトンとしている。
説明を加えると帝人は普段は見せない小さな笑みを浮かべ「それなら」と俺の耳元で囁いた。

「        。」




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