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腐男子正臣くんと女装レイヤー青葉ちゃん



「なぁ、青葉。来月のイベントでこのコスして欲しいんだけど出来るか?勿論製作費や謝礼も弾む」

それは夏と冬以外にも行われる中規模即売会の1か月ほど前の話。

街中で青葉を見つけた正臣は呼び止めるとスマホを取り出して単刀直入に尋ねた。
画面に映る人物のコスプレは可能か否か。
何の前振りもなく問われた問いに青葉は怪訝な表情を見せながらもスマホの画面を覗くとそこには青葉もよく知る人物の画像が映しだされていた。
自分達より幾分か年上の青年。カジュアルな服装にスローハットがトレードマークの様にいつも被っている軟派男。正臣の妄想の被害を真向に受けているその男、に似せたイラスト。
知っているものが見れば誰もがそのイラストの人物を六条千景と答えるほど特徴を捉えた一枚絵に描かれているものはその千景の女装イラストだった。
青葉は正臣がいわんとしている事を測り兼ね、思わず問い返した。

「『このコス』って……俺が、ですか……?」

芸能人など実在してる人物にコスをすることは珍しくないとはいえ、自分がする理由が分からない。
千景は芸能人でもないし、正臣の知り合いだ。コスするまでもなくスペースに置けばいい客寄せパンダになるだろう。
加え千景は正臣に誰が見ても分かるほど入れ込んでいるわけで、そんな正臣が頼みごとをすればほいほい叶えてくれる。そんな条件の中わざわざコスを頼む理由もメリットも見当たらない。
返答を言い淀んでいる青葉に女装に不服があるのかと勘違いした正臣が言葉を重ねる。

「そう、お前、よく帝人の女子創作キャラのコスしてるだろ。女装は慣れたもんだろ。ちっこいし、童顔だし」
「先輩、それが人にものを頼む態度ですか」
「帝人とのことは丸く収まったとはいえお前の悪意ある暴露は許してねーから」
「それならこんな嫌な俺に頼まなくたって六条千景に直接女装してほしいって可愛くお願いすればいいんんじゃないですか?ほら、あの人先輩には甘いですし」
「真っ先に頼んだんだけどさ、『貞操の次は男の尊厳まで奪う気か!』って泣かれた」
「……アンタ何したんだよ」
「ちょっと静雄さんと一発しないかなっと波江さんにもらった薬を千景さんに……冗談だぞ?」

言葉では冗談と言い切る正臣だが青葉の目には冗談には感じられず、「この人容赦ないよな」と他人事ながらに身震いを感じる。
正臣の薄ら恐ろしい一面を垣間見た気がした青葉を仕切り直す様にひとつ咳払いをし、「事情はわかりましたが」と前打って本音を明かす。

「で、貴方の頼みを聞いて俺に何のメリットがあるんですか。謝礼を弾むって言ってましたけど、お金で動かされる気は」
「帝人×青葉本を書いてお前にやる」
「わかりましたやりましょう」

そうして鮮やかな手の平返し。
半分冗談のつもりで言った言葉に即座に反応さえ、了承され、言った本人の正臣は少し引き気味に青葉と握手を交わす。


こうしてお互いの利害は一致し、即売会へと動き出すのだった。



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