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リーマンろちまさ


あれから5年。
携帯の待ち受けに映る少年を見つめて男は息を吐いた。
5年も経っても変えられない待ち受け。
それを見るたびに思い出すかの少年との思い出。
自分ながらに未練がましいと思えど、別れから納得出来るものでもなく、そんな思いを抱えたままずるずると5年。

そろそろ一方的にフラれ音信不通となった少年のことなど忘れ、新しい恋を探さなければ。
と、思い何人かと付き合ってみたものの思い出すのは待ち受けの少年。
せめて、もう一度ちゃんと話が出れば。

「おい、六条」

と、いつも通りの結論を出していたところでかけられた声に男ーー六条千景は慌てて顔を上げた。
そこにいるのは己の上司。

「仕事中に携帯を触るなとは言わないが、女の子ことばかりうつつを抜かすな」
「あ、いや、あはは。それで、何ですか」
「今日からここに配属された新人だ、六条。お前が面倒を見ろ」

上司は呆れたように肩をすくめ軽く注意したあと、己の隣を指し、用件を千景に伝えた。
しかし千景の目にはそこには誰もいない。
からかわれてあるのだろうかと思うが付き合いやすい上司とはいえ仕事でそんなジョークを言う人ではない。
意味がわからず千景は首を傾げる。

「……誰もいないっすけど?」
「なっ?!おい、誰か紀田を見てないか?」
「紀田くんなら何やら慌てて『ちょっとトイレ行ってきます』って走っていったけど」

黙っていてもしょうがない。
一応小柄なため上司の背に隠れて見えないだけかと確認するように覗き込み、やはり誰もいないことを確認すると千景は思ったままのことを口にすると上司の男は驚いたように振り返る。
先程までそこにいたであろう新人の姿が見えない事に気付くと上司はその所在を尋ねる。するとすぐ答えが返ってきたが、千景はもはやそんなことどうでもよかった。
新人の名前。
自分の聞き間違いでなければ、、、

「正臣」

5年前に別れた恋人。その人だ。
千景は戻ってくる間の待ち時間ももどかしいと立ち上がると「俺もトイレ」と簡単に一方的に上司に伝えると慌ててフロアを飛び出した。

もう逃がさないと言うように。
今度こそ離さないと言うように。



千景の恋が再び動き出す。






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